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無理しない ケガしない 明日も仕事! 新根室プロレス物語のKKMXのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

 カ…カテェ!非常に素晴らしいドキュメンタリーでした。シンプルに感動しました。だいたい3部構成で、前半は新根室プロレスの紹介、中盤はリーダーであるサムソン宮本さんの闘病記、終盤はサムソン亡き後の新根室プロレスの復興となります。


 根室で暮らすおもちゃ屋さんの宮本氏が中古リングを購入したことをきっかけに旗上げされた地方インディ団体『新根室プロレス』。宮本氏は覆面を被り(地方インディはみんな覆面を被る)、サムソン宮本と名乗り、結構しっかり興行を打っていきます。
 サムソンさんはとにかく、イケてないプロレス好きのおじさんに声を掛けて、プロレスラーやスタッフに仕立て上げていきます。おじさんたちはみんな青春時代に鬱屈していたので(プオタってこんな人ばっか)、新根室プロレスは遅れてきた文化祭のような感じみたいで、すげぇ楽しそうでした。この辺の楽しさが伝わるんでしょうね。
 また、結構ハードめな人にも声かけしており、大仁田のパロディキャラである新聞配達員の大砂厚さんは、おそらく福祉的なサポートが必要な人(部屋が超ヤバい)。大砂さん、新根室プロレスがなければ多分完全に孤立しちゃうタイプなので、サムソンさんは大変めな人の精神的な支援も結果的に行っていたことになります。個人的にロックやプロレスといったカルチャーは、シビアな人生を送っている人の支えになりやすいモノだと思ってますが、新根室プロレスはそれを体現した存在でした。
 割とギリギリのネタをブッ込んでくるのがプロレス的でイカす。田代まさしキャラの実況・MCマーシーは結構ギリな感じで最高!どちらかというとCKBの剣さん似だけど。イイネ!

 やがて新根室プロレスは軌道に乗っていきます。さらに、身長3メートルのアンドレ・ザ・ジャイアントパンダという着ぐるみプロレスラーの登場で結構なブレイクを果たします。アンドレは俺も認識していて、赤井沙希様ともタッグを組んでおりました。
 サムソンさんは優れたプロデュース能力もさることながら、サムソンさん自身のプロレスラーとしての能力の高さが印象深い。だからこそ新根室プロレスを牽引し、デカくできたのでしょう。リングインでコケる、オールドスクールで股間を強打、カンチョー攻撃等々、非常に定番ムーブを大事にしています。まさにこれはアメプロイズム!ネイチことリック・フレアーやロック様に通じる様式ギャグこそがプロレスのキモだと思っているので、サムソンさんは実に俺好みのレスラーでございます。
 あと、サムソンさんの弟・オッサンタイガー(小さな大人、というキャッチコピーも最高!)、ルチャドールとしての能力が高い!ティヘラ(ヘッドシザーズといって、足で相手の頭を挟み、自分の体をくるくる回転させて遠心力で吹っ飛ばす技。メキシコではメジャー)とかガンガンやるし、受け身や間の取り方とかもめっちゃしっかりしている。若手のトモヤくんもかっちりしたレスリングするし、全体的にプロレスの本分をしっかり抑えているのでこれは観たくなります。

 そんなサムソンは、若くして難病に倒れます。本編の中盤はサムソンさんの闘病記となります。プロレスばっかやってて、愛するワイフに逃げられたサムソンさん。しかし、新根室プロレスのラスト興行で、なんとワイフがサプライズ出演し、サムソンさんの残り少ない人生を共に過ごすことを宣言!これはプ的にもグッとくる流れでした。サムソンさん、ナイスガイで多くの人たちを支えてきたから、プロレスの神様(馬場&ジャン鶴&三沢…全日派だったもので。あとリングネームから冬木も噛んできそうだ、理不尽神様)がサムソンさんにビッグプレゼントを贈ってくれたような気がしましたね。やがてサムソンさんは、妻や子どもたち、新根室プロレスの仲間たちに見守られて旅立ちました。

 ラストの新根室プロレスの復興パートも熱かった!アンドレに対抗するように巨大サムソンが登場したり、若手レスラー・トモヤくんが2代目サムソンになる等(すぐに覆面剥がれるが)、まさにサムソンはネバーダイ!ビデオレターを遺して、トモヤくんを鼓舞するとか、マジで生きてましたねサムソン。この辺の演出力も名プロレスラーの証です!


 本作はプロレス好きならば要チェキ作品です。プオタには基本薦められない地獄のど真ん中、実にマグマな映画『アントニオ猪木を探して』とは真逆の方向性を持った作品です。本作はプロレスの核が詰まった、目ん玉飛び出るストロングスタイルなドキュメンタリー、オオ…恐れ入谷の鬼子母神ッッ!ゴマシオもビックリです!まさに正統派プロレス映画のど真ん中でした。
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