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シェパードのMOCOのレビュー・感想・評価

シェパード(2023年製作の映画)
2.5
「俺について来い、家に還してやる!
 俺の翼を見失うな!」(ジョン・ガバナー)

 
 1957年雪の降るクリスマス・イブ、英国空軍の若きパイロット、フレディ・フックは、恋人リジーに会いたくなり急遽夜間の単独飛行を申請します。
 ジェット機チャーリー・デルタでドイツ北部・英国空軍ツェレ基地を離陸して、オランダ上空から北海を越えてノリッジのレイクンヒース基地へ向かうフライトは約66分。晴天で80分の燃料を積載した飛行は夜間飛行資格を取ったばかりのフレディでも楽勝のはずだったのですが、離陸してすぐにコンパスが機能しなくなり、続いて電気系統に異常が現れます。
 無線での呼び掛けに応答はなく空は深い霧に包まれ燃料はあっという間に0に近づきます。

「神よ、私をお救いください・・・。誰か僕を着陸させてくれ・・・」
「リジー、君とクリスマスを過ごしたかっただけなのに・・・」
 恐怖と後悔がフレディを襲います。
 イブのため基地内の公衆電話は長蛇の列でリジーにも家族にもフライトのことを話す時間が無かったフレディは孤独な死を覚悟します。

 燃料計が0を指した時、機体はオーロラの中に入り込みオーロラを抜けるときフレディは右手前方に機影を発見し、無線の声を聞きます。
「誘導が必要なのか?」クロコダイル・リマ・モンキー・デルタのIDを名乗る男はそう呼び掛けてくるのですが、無線機が故障したフレディの声は届きません。

 遠くに見える機影はプロペラ機のモスキート戦闘機・・・。
 フレディは機を横付けしてコクビットにモンキー・デルタを確認すると手信号で状況を説明し、誘導に従い追尾し誘導灯の灯いた滑走路に無事着陸をします。


 ディズニープラスの短編映画『シェパード』です。リチャード・ジョンズ(プロデューサー)とイアン・ソフトリー(脚本・監督)は、30年前にジョン・トラボルタが同名小説の選択売買権を手にしたことを知り映画化の交渉を始めたそうです。
 フレディ役を演じるために権利を買い取ったジョン・トラボルタは子供の頃から操縦士に憧れを持つ航空機マニア。
 主役を譲ったジョン・トラボルタは、ジョン・トラボルタの出演を知らなければ見逃すほどの短い時間、コックピットからフレディを誘導するベテランパイロット役で登場します。


 ミントン基地滑走路に降り立ったフレディを確認したモンキー・デルタはそのまま飛行を続けフレディと会話することなく基地を後にします。
 イブに一人基地に残っていた当直のジョージ・マークス軍曹は基地内の将校クラブで冷えた体を暖めるウイスキー出してくれ、暖炉に火を起こしてくれます。
 フレディは壁に掛かった見覚えのあるモンキー・デルタの写真を見つけ尋ねます。
「このパイロットは?」
「戦時中ここにいたカナダ人のジョン・ガバナーです」
「彼の任務は?」
「先導です。モスキートに乗っていた」
「僕を助けてくれた」
「・・・あり得ない。
 彼のラストフライトは14年前の1943年のクリスマスイブだった。彼は帰ってこなかった・・・」

 レーダーでチャーリー・デルタを追っていた軍隊の二人がフレディを迎えにミントン基地を訪れます。
 そしてフレディはもう一つ不思議な体験をしていたことに気がつきます・・・。


 ジョン・ガバナーは14年前から時空をさまよっているのか?
 ジョン・ガバナーはこの日のために時空を越えたのか?
 フレディが短い時間旅行をしたのか?・・・そこはよく解らないのですが、フレディは『イブに不思議な贈り物を受け取った』訳です。

 季節外れの観賞からなのか38分の話が短すぎるのか感動までは行けませんでした。
 ジョージ・マークスとの会話の中で、フレディの父親がパイロットで行方不明になった話が出ているので、せめてそこに話が繋がれば面白味が増したかもしれません。

 ジョン・トラボルタの出演を知って観ると、コクビット内の小さなジョン・トラボルタでもやはり存在感を感じます。
 総指揮に名を連ねるジョン・トラボルタの大きな飛躍になれば・・・と言われているようですが、どこか馴染みのある内容は新たな感動もなく物足りなさを感じてしまいます。
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