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仕掛人・藤枝梅安のMOCOのレビュー・感想・評価

仕掛人・藤枝梅安(2023年製作の映画)
3.5
「その死にかたを決めているのは俺たちではない。
 俺たちは人の死にかたそのものだ」


 仕掛人藤枝梅安(豊川悦司)は ある仕掛の後、同じ仕掛人の楊枝作りの職人・彦次郎(片岡愛之助)の家に泊ります。
 梅安はその朝帰りの道で一人の若い侍(早乙女太一)が大勢の侍に追いたてられながらも返り討ちするのを目撃し、倒れた侍が命を失くしていることを確認すると何も見なかったかのようにその場を後にします。

 梅安は蔓(つる=裏稼業の顔役、仕掛人の雇い人)の羽沢嘉兵衛(柳葉敏郎)から料理屋・万七の女将おみの(天海祐希)の仕掛けを依頼されます。
 三年前、万七の前妻おしずを仕掛けた梅安は因縁を感じます。

「仕掛けの依頼人を探ってはいけない・・・」不思議な巡り合わせ故に、 梅安は仕掛けの前におみのの調査に万七に来店し、女中おもん(菅野美穂)と深い仲になりおみののことを聞き出します。

 おもんの話では、万七はおみのが本妻になり店を切り盛りするようになってから古参の奉公人たちが次々と辞めていき、店の料理の評判は落ちているにもかかわらず儲けは上がっているのです。
 おみのは親切を装い、お金に困った家の見栄えのいい娘を女中として雇い、まだ年端の行かない娘を騙して『離れ』で上客にいかがわしい接待させているのです。

 三年前の仕掛けが気掛かりな梅安は万七でおみのの顔を見て驚きます。
 おみのは幼い時に引き離された梅安の妹だったのです。母と妹の3人暮らしだった梅安は幼い時に母親が男を作り妹だけを連れ出し、梅安は捨てられたのです。
 梅安は後に鍼医者津山悦堂(小林薫)に拾われ鍼医者の道へ・・・。


 梅安はある寺の住職に頼まれ暴行を受けたと思われる若い女性の往診を内密に行います。
 
 旗本島田大学は家臣の御新造(ごしんぞう=武家の妻)に無理やり姦通(かんつう)したことをその娘おちえに直々に談判されると娘も犯そうと倉に連れ込むと激しい抵抗にあい暴行し監禁します。
 その場に居合わせた石川友五郎は島田を見限りおちえを倉から連れ出し回復のためおちえを寺にあずけます。
 梅安が診療したのは素性を明かされないおちえだったのです。

 梅安は石川をつけ、隠れ家を訪れ事の真相を知ります。

 彦次郎は蔓の田中屋久兵衛から石川友五郎は「やってもいいとんだ悪党」と仕掛けを依頼され石川の隠れ家を突き止めます。
 彦次郎はそこで偶然梅安と会い、石川は立派な侍で蔦に騙されていることを知ります。

 島田は万七の上客、久兵衛はおみのの仲間。島田は謀反を働きおちえを連れ出した石川を無き者にするべく久兵衛に仕掛けを依頼したのです。梅安が見た大太刀回りは島田の依頼で久兵衛が雇った刺客だった訳です。

 梅安は久兵衛が万七にいる時間に彦次郎を田中屋に行かせ、彦次郎のアリバイを作ると久兵衛に仕掛けを行います。

 梅安は彦次郎に石川を見守るように頼み、島田に仕掛けを行いに出掛けます。

 その頃石川は島田が直接雇い入れた大勢の浪人と刀を交え彦次郎は毒を盛った吹き矢で浪人を次々・・・。

「身内と言えどももう昔の話」梅安はなんの躊躇もなく鍼をおみのの首に立てます。
 仕掛けを終え万七を出る梅安はおみのの部屋でおみのが大切にしている見覚えのあるものを見つけ凍りつきます・・・。

 梅安は身勝手に自分の妻二人の仕掛けを依頼した万七の主を・・・。

 
 彦次郎が仕掛人になる以前に足を入れた窃盗団の親方がおみのの義理父で、金銭目当てでその親方を殺したのはの彦次郎、親方が死んで自由を手にしたのが子供の頃のおみの・・・と、いった具合に話が狭い人間関係に押し込められた感はあります。

 梅安は依頼のあったおみのの仕掛けに付帯して3人を仕掛け、彦次郎は前金を受け取っていながら依頼を反古にし尚且つ梅安と結託し蔓に仕掛ける話は毎週TVで見ていた胸のすく話とは違って、冷静に判断しておみのに仕掛けた梅安が自分の物差しでは測り知ることができなかった感情が梅安を襲います。


 ゆっくり流れる時間をまったり過ごす事が出来る時代劇です。part1から2までの約4時間を特に苦痛なく連続して観ていました・・・。
 TVシリーズにあるような大勢の仕掛人が、分担して大勢の悪人に仕掛けをする訳ではなく仕掛の対象は一人、したがって一人の仕掛人に依頼がはいります。

 最近の時代劇映画は興味さえ湧かない中で期待いっぱいの映画でした。天海祐希さんはイメージとは違う、仕掛けの対象となるおみのを熱演しているのですが、いつものように大根役者を露呈するおもん役の菅野美穂さんが一人映画の質感を落としているのが残念です(羽沢嘉兵衛役の柳葉敏郎氏もどちらかと言えば大根)。


「年が明けたら京に行こう」
 石川とおちえを安心できるところへ送り出した2人は梅安の恩師の墓参りを兼ねた2人旅に出掛けます。
 道すがらお伊勢さんの詣でを済まし京に入る直前、彦次郎はその昔・・・盗賊になる以前に妻を犯し子どもを道連れに自害させた男を見つけるのです・・・。当時とは違い立派な侍になった男を・・・。
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