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集団左遷のMOCOのレビュー・感想・評価

集団左遷(1994年製作の映画)
2.5
「専務として迎えに来たのだけど駄目か?
 じやあ、これからはライバルだ。頑張れよ」


 実在の企業をモデルに、明日なき命を燃やすサバイバル戦をリアルに描いた男たちの復活ドラマ!
『集団左遷』は経済小説を得意とする江波戸哲夫(えばとてつお)氏が1993年に著した小説です。当時週刊誌の紹介記事を読んで購入し一気読みし今も蔵書としているのですが、この映画はレンタルビデオで観て原作とは違うエンディングだった記憶があります。今回は購入DVDの山から引き摺り出しての観賞です。


 バブル崩壊の後の1994年、太陽不動産は横山副社長の立案で外部からコンサルタントを招いて、大量の無能な社員と購入時の3分の1の価値になった不良物件を処分して経営危機を乗り越える大胆なリストラが計画されます。

『首都圏特販部』という新事業部が創設され、先ず各部署に配属されている無能な50人の社員を送り込み、今期内(3か月)に達成不可能な15億円の販売目標を課して公然と50人のリストラを行い次に更に50人を送り込み100人のリストラを行うものです。

 横山副社長(津川雅彦)はかっては営業部のエースだった総務部・社史編纂室長の篠田洋(中村敦夫)を本部長に据えることを提案します。
 篠田は横山が本部長時代に直接の部下だったのですが、横山の詐欺まがいなやり方や収賄を批判して横山から離れていった男です。

 バブル期に篠田に他社から引き抜かれ成果をあげていたのですが同業者とトラブルを起こして総務部へ左遷されてる滝川晃司(柴田恭兵)、娘の結婚を控えた退職間近のサボリ魔・花沢浩平(小坂一也)、妻の癌を契機に家庭優先なってしまった柳町敏夫(河原崎建三)らを中核に大半が営業経験の無い従業員がリストラ候補として集められます。
 横山の秘書で捨てられたともスパイとして送り込まれたとも噂される今村春子(高島礼子)は自ら望んでの転属です。

「この人員での予算達成は無理」と退職を考えていた篠田は滝川が残ることから自らも会社に残ることにします。

 柳町の第一営業部は坪単価が高く交通アクセスの悪い太陽芝浦大八ビルの3フロアー3,500平米
 花沢の第二営業部は太陽中野のドラゴンマンションの贅沢仕様の11戸8,600万円の3LDK80平米
 滝川の第三営業部は半年も放置された草ボウボウの太陽厚木タウンズの第二期分譲の平均7,100万円の20戸を担当することになります。 

『首都圏特販部』には営業予算も宣伝費も無く、チラシ配りも草むしりも自分達が行うことになります。さらに値引きを封じられてしまいます。

 滝川はかって恋人だった住宅情報ウイークリーの編集長・原俊子(萬田久子)に『首都圏特販部』の販売物件を取り上げてもらおうと、記事掲載を頼みに行きます。
 ところが体の良いリストラ集団と察知した原は滝川の思いとは違ったリストラ集団の悲哀の特集記事を書き、滝川は仲間からも会社からも批判されてしまいます。

 柳町は病弱な奥さんのつてで大手企業鳥越商事と商談をまとめかける中、第二営業部の若い南野がマンションの一室を老夫婦に販売し営業部は盛り上がりをみせます。

 鳥越商事との契約は突然横山一派に横取りされることになり滝川は横山副社長に記事を読んだ先方からリストラ組に任せられないから担当を変えて欲しいと連絡があったと言われてしまいます。

 滝川は文句の一つも言ってやろうと再び原を訪ねるのですが「間違ったことは書いていない。きっと読者の反響が・・・」と言われて引き下がります。

 柳原の件といい、まとまり始める商談はことごとく本部営業部に担当が移ってしまい、部署内の情報が筒抜けになっている疑いがささやかれはじめます。

「左遷されて初めていままでの自分のことを考え直している。そしてそこから新しい自分達の生き方を見つける。それが戦いなんだ・・・」原が自ら書いた記事は読者に思わぬ反響があり、部署には物件の問い合わせ電話がひっきりなしに鳴るようになり、特販部は活気づいていきます。

 滝川は大型ディスカウントショップのオーナー・藤尾(伊東四郎)と倉庫と社員のための戸建て住宅の大量発注の契約がまとまり始めます。

 春子は必死に働く部署の人達のためにホテルに宿泊する横山副社長を訪ね、体を求めてくる横山に『首都圏特販部』の存続を条件にするのですが「帰れ」と一笑に付され、関係を断ち切ってホテルを出て来るのですが、横山の言葉から花沢が内通していることに気がつき滝川に報告します。

 横山副社長は花沢がサボっていた実態を把握しており、クビをちらつかせ『首都圏特販部』の仕事の進行をリークさせていたのです。

 横山一派は滝川が進めているディスカウントショップオーナーの商談が今期内にまとまることを恐れて、花沢に「契約がずれ込むようになんとかしろ」と指示を出します。
 花沢は明日から公開となる厚木タウンズの戸建て物件でボヤ騒ぎを起こそうとするのですが大きな火災になってしまいます。

 篠田の必死の消火活動で被害は5戸に収まるのですが篠田は怪我を負い救急搬送されることになってしまいます。

 滝川は花沢と共に藤尾を訪ねるのですが「誰も住んでいない住宅に火をつけられる会社と契約できない!白紙!」と言われてしまいます。
 滝川は花沢の放火を告白し花沢と誠心誠意お詫びをしたことで10戸5億円の契約にこぎつけるのですが目標の売上には結局届くことはなく営業会議の日がやって来ます・・・。

 篠田は「この3か月の特販部の成績は本部営業部と遜色無い」と『首都圏特販部』の存続を訴え、横山副社長は予定通り『首都圏特販部』の社員のクビを主張します。ところがコンサルタントは宣伝費0で7億円の売上は営業本部の成績と遜色無い成果があったと判断します。

 それでも存続に値しないと言い張る横山副社長は会議室に乗り込んだ『首都圏特販部』の社員を無能呼ばわりし、春子は以前横山がホテルで賄賂を受けとるのを見たと告発します。
 逆上した横山は「 金をばら蒔いたベッドの上で裸になった女」の言うことなど・・・と、言い返したことで、滝川は春子のために横山を殴り付けその場で解雇されてしまいます。

 横山はそのまま会社に残り、
篠田は高く評価され営業本部長になります。

 滝川は横山に「太陽不動産が社員に火をつけさせた」と書かれた記事のゲラ刷りを持ち込み、解雇された花沢の退職金を手に入れます。

 篠田には新たに設立した子会社アポロ・ハウジングの社長の席が用意され早速滝川を迎えに行くのですが、滝川は「ハウジングプランナー有限会社滝川プランニング」を立ち上げておりそこには春子と南野の姿が・・・。


 高島礼子さんは「首都高速トライアル3(1991年)」 「さまよえる脳髄(1993年)」に続く映画出演、こんな映画でヌードがちらっと見え驚かされます。

 小説の内容は忘れてしまったのですが、篠田は死んだような気がします、小説から受けた印象以上の作品でないのは確かです。
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