MOCO

そして友よ、静かに死ねのMOCOのレビュー・感想・評価

そして友よ、静かに死ね(2011年製作の映画)
5.0
「危険を犯してもやるべき事がある。やらなかったら俺は一生眠れない」(モモン)

 1970年代『リヨンの男たち』と名乗るギャングが存在した。男はかってフランスの犯罪史に名を残す伝説の犯罪者だった・・・


 モモンは25年前、ギャングの世界から足を洗いファミリー(ギャング時代一緒に行動していた仲間)と平穏な暮らしをしています。

 ある日、幼い頃からの親友でかつては行動を共にしていたセルジュが長い逃亡の末に逮捕されます。
 セルジュはモモンが娘のように面倒をみているリル(セルジュの実の娘)が夫カルロの暴力に苦しんでいるのを聞き付け会いに来た所を逮捕されたのです。

 セルジュはスペインの麻薬組織のゼルビブを裏切っているため、収監されれば刑務所内のゼルビブの仲間に消されるためファミリーの間ではセルジュ奪還の話がでるのですがモモンは家族を巻き込むことを嫌い「24時間の監視と良い弁護士をつければ守ることが出来る」と結論を出したのですが弁護士に断られ、奪還が決行されます。

 決行の日、密かに差し入れされたカミソリでセルジュは手首を切り病院に搬送されます。
 ほぼ同時刻、モモンはファミリーの人間を車に乗せ街を走りブロナー刑事率いる警察隊の目を引きつけている間に別の仲間が病院に向かいます。

 モモンは流血のない奪還がされると思っていたのですが、実行グループに粗暴なカルロがいたため警察に多くの死傷者を出してしまいます。
 怒ったモモンは金を渡すと「目の前から消えろ」と言うのですが「何処へ逃げればいいんだ?!」とカルロが詰め寄り、セルジュは「誰にも見つからん良い場所がある」と、カルロを射殺し、恐れをなした若い実行者たちは退散していきます。
「娘になんという」と言うモモンにセルジュは「心配事が失くなった」と・・・。

 13年ぶりの再会になったものの、犯行に気が付いた奥さんにモモンはやったのは俺ではないと言いながら「危険を犯してもやるべき事がある・・・」と話します。

 モモンは幼い頃いじめから救ってくれたセルジュと仲良くなり、行動を共にするようになり、大人になり悪乗りでサクランボを盗ったことで2人は不当逮捕されます。
 ギャング組織に入ったセルジュに誘われたモモンは組織の中で活躍をするのですが、恋人に子供ができたことを理由に「足を洗いたい」と言い出し組織に襲撃をされ、若い仲間と共に幹部全員を抹殺し報復を果たすと、我が物顔で強盗を繰り返します。
 モモンはニックに誘われたセルジュにスペインでの麻薬取引を誘われるのですが「麻薬には手を出さない、好きなようにしたら良い」と断ります。モモンにはこだわりがあるのです。

 ある日、モモン達は密告でアジトに踏み込まれ無抵抗の内に逮捕されてしまいます。
 良い弁護士が着いたことで、モモン達の犯行は流血を避けていた主張が通り、終身刑を免れモモンは10年の懲役刑その他の仲間も10年から5年の懲役刑(モモンの奥さんは無罪)で済んだのです・・・。
 この逮捕劇には麻薬に絡むニックの存在があり、担当のバスティアーニ刑事は「ニックも仲間」という証言をモモンから取りたかったのですが、モモンは決して仲間を売ることはなかったのです。

 セルジュは隠れ家に匿われるのですが奪還の実行者が別の町の酒場で口を滑らせたことからモモンの存在をゼルビブが知ることになり、モモンは愛犬を殺され「セルジュを渡せ」と、脅迫の電話を受けます。

 モモンは息子の家に妻を避難させ、リカとルカは人目のつかない所に移し護衛をつけるのですが、かっての仲間は次々と殺されリカも犠牲になってしまいます。
 モモンはセルジュと共にゼルビブの自宅に忍び込みをゼルビブを射殺しリカの復讐を果たします。

「お母さんを撃った男(ゼルビブ)はニックという男に電話をしていた」母親が撃たれる現場に隠れていた幼いルカの話を聞いたモモンは、スペインのニックを訪ねます。
 モモンは当時現場に居なくて逮捕・懲役刑を逃れたニックが密告者だったのではないかと、疑って訪ねたのですが、ニックは密告を否定した上で、セルジュにはこれまで何度も裏切られたと話し、そのセルジュを助け出したのは愚かな行為と批判し、モモンに「いい加減に目を覚ませ、セルジュの隠れ家を教えなければ大切な家族にも危害が及ぶことになる」と言います。
 セルジュとの友情を重んじるモモンはニックの話には耳を貸さず家族に危害を加える宣言をするニックを、予め用意してきた一辺をカミソリのように加工したクレジットカードで首を切りつけ殺害し帰って来ます。

 ブロナー刑事からニックの殺害を尋ねられたモモンは否定するのですが、当時のモモン達の逮捕はセルジュの密告によるものだったことを示す資料を見せられ「セルジュを引き渡してくれればニックの殺害は揉み消す」と言われます。
 モモンはセルジュの量刑が自分の半分の5年しかなかったことにはじめて気がつきます・・・。

 かってリヨンの男たちと言われた結束の固い男たちは35年を経てたった3人になってしまっていたのです。
  セルジュに逃亡の為の偽装パスポートと免許証と金を渡したモモンは「弾は一発だ、使い方を間違えるな。35年もの裏切りに仲間に恥じない落とし前を付けろ」と拳銃を渡し隠れ家を後にします。
 モモンは突入を待つブロナー刑事率いる警察隊を横目で通り過ぎ・・・。


 25年前「お前でも友達選びを間違えるんだな」モモンは節度を持った真面目な男と一目を置くバスティアーニ刑事が取り調べのときに口にします。
 モモンは最後の最後まで友情を信じその決着はセルジュに任せます。
 それにしても信じる者を間違えると本当に痛い目に合いますね(経験者)。くわばら、くわばら、桑原和男。

 コジャレた日本語タイトルに誘われたDVD観賞は結構良作に巡り会わせてくれました。
 この映画もオリヴィエ・マルシャル監督・脚本作品、過去と現在が幾度も交錯する作品ですが俳優が良く傑作です。
 そういえばアラン・ドロンの映画に「友よ静かに死ね」ってのがありましたね・・・。
MOCO

MOCO