MOCO

あるいは裏切りという名の犬のMOCOのレビュー・感想・評価

5.0
「 転属願いを出したって?
 残念だ。警部に昇進するメンバーに君の名前もいれようと思っていたのに」(ドニ)
「他の人達は飲んだのね」(エヴ)
「彼らにとって得策だからな」
「私はごめんだわ。職務に忠実な警官でいたいだけ。
 汚いことは嫌いだわ」
「なら、どうして黙っていた」
「話してどうなるっていうの?
 いつか亡霊があなたを迎えにやってくる。それを待つのね。
 自分の罪と孤独の深さを思い知るわ」


  パリ警視庁の探索出動班のレオ・ヴリンクス警視(ダニエル・オートゥイユ)は強盗鎮圧班ドニ・クラン警視(ジェラール・ドパルデュー)と、陰湿なライバル関係にあり、そのチームも対立状態にあります。

 レオ達チームが定年退職するエディの少し早めの送別会を行った夜、現金輸送車強奪事件と娼婦マヌーの店で暴行事件がおきます。

 翌日、現金輸送車強奪事件の臨時会議が開かれます。
 パリではこの一年半で7台の現金輸送車が襲われ9人が殺害され、その被害額は200万ユーロに達していました。
 会議の後、パリ警視庁長官は国家警察総局長に任命されたことをレオに打ち明け、レオを現金輸送車強奪事件の指揮官に任命し自分の栄転の手土産に強奪犯の逮捕を要求します。
 さらに空席になるパリ警視庁長官のポストを取るためにはこの事件の解決が影響し、クランも後任候補に挙げられていると話します。上司は昇進欲のない、人望のあるレオにポストを譲りたいのです。

 レオは暴行事件の被害者マヌーからブリュノとロルフのウィンターシュタイン兄弟が閉店直前の店にやって来て「私を暴行したのはブリュノ」と聴き警察官であることを伏せて、一部の署員と共にブリュノを拉致しブリュノに暴行を加え「二度とマヌーに近づくな」と警告します。マヌーはチームの情報源なのです。
 レオ達はブリュノから奪った7,000ユーロをマヌーの見舞金にし、ティテイは折り畳みナイフを戦利品として持ち帰ります。

 そんな中、レオは特別外泊許可を許された服役中のシリアンに呼び出されます。
 レオは助手席にシリアンを乗せ車を走らされると、誰かと待ち合わせた人気のない路上に車を止めさせられます。一台の車が止まるとシリアンは車を降り、隠し持っていた銃を車内に向け3人を射殺し車に戻ると「すぐに車を出せ」と言いレオは慌てて現場から逃げだします。

 シリアンはあと数週で釈放されることを利用して、外泊許可を得て密告で自分を刑務所に送り込んだゼルビブの殺害を実行したのです。

 アリバイ工作に利用されたレオは怒り狂うのですが、アリバイ証言と引き換えに現金輸送車強奪事件の犯人と次の犯行に利用するアジトと犯行を行う日の情報を提供されます。

 レオのチームは、情報を元にフランシス・オルンとロベール・ボブ・ブーランジェの情報を収拾し犯行前に集まるアジトに出入りする人間の割り出しをはじめます。

 ドニは小飼の情報屋ゼルビブを深夜の路上で失い犯人を追う中で服役中のシリアンにたどり着きます。面会をしたシリアンは「もう2週間もすると釈放なのにそんなことをするはず無い。その時間はレオと一緒だった」という証言を聴きます。

 レオは不足する人手を補うためにドニのチームに応援を依頼し、クランからシリアンのアリバイついての質問を受けます。

 犯行現場で犯人を逮捕しようとするレオの計画に反対するドニは「過去の例でも反撃に合い取り逃がす可能性が高い。アジトに奇襲をかけるべき」と上司に報告するのですがレオに従うように言われます。

 犯行が計画されている日、レオ達は複数の車に乗り込み犯人の車が動き出すのを待つのですが、主犯格のオルンが車両に乗り込もうとするのを確認したドニは無線連絡を無視しオルンに近付き引き金を引くのですがオルンを殺害することはできず返り討ちに倒れ、ドニの部下エヴを人質にとられてしまいます。
 オルンは人質を代わると言うエディに発砲すると悠々と車で逃走します。
 レオは定年間近の相棒エディを目の前で失い、人質にとられていたエヴは自力で車両から飛び出し最悪の事態を逃れます。
 防弾チョッキで助かったドニは責任を問われ調査委員会にかけられます。

 レオはたれ込みからオルンが潜むアパートを急襲しオルンを逮捕し、ブーランジェは緊急検問を突破しようとして射殺され現金輸送車強奪事件は一応の決着が着きます。

 ドニはゼルビブ殺人事件の車に同乗していた売春婦から「レオが車を運転していた」というたれ込みを得て密告しレオは逮捕されてしまいます。

 釈放された後犯行が発覚し逃走中のシリアンから連絡を受けたレオの妻カミーユ(ヴァレリア・ゴリノ)はシリアンと会いゼルビブ殺人事件の真相を記した手紙を受けとるのですが、シリアンを追うクランのチームから追われ、運転を誤り二人は命を落としてしまいます。

「シリアンがカミーユを撃つ銃声が聞こえ、車が横転しシリアンが撃ってきたので応戦し射殺した・・・」
 妻の葬儀に出席した服役中のレオは、後悔と悲しみに暮れながら模範的な刑期を過ごし7年後出所します。

 レオの逮捕後ドニは調査委員会から不問にされ、パリ警視庁長官となります。
 その就任パーティーで侮辱的な行動をしたティティはドニにクビを切られてしまいます。

 出所したレオはパブを経営しているティティを訪ねカミーユの事故の現場に居た者は全員出世し、エヴだけは出世していないと聴きエヴを探し隠された真実を知ります。

 数日後、ティティは帰り道でパブで絡んできて叩き出した客に襲われ所持品を奪われるのですが、所持品の中の折り畳みナイフを見つけられてしまいます。暴漢の一人はロルフだったのです。
 ブリュノのナイフに気が付いたロルフはすでに瀕死のティティから「あの時一緒にブリュノに暴行した奴」の名前を聞き出すとティティが脳死になる一撃を加え去って行きます。
 
 レオはパーティー会場の外でウィンターシュタイン兄弟が待ち伏せをしていることを知らずに、復讐のために警察主宰のパーティーに潜り仕込むと「死者の代わりに戻ってきた」と、ドニに拳銃を突き付けるのですが数日前一人娘ローラから「二度と置いて行かないで」と言われたからなのか銃を置きドニの元を去って行きます。

「俺を覚えているか?」7年前の暴行事件の恨みを晴らすウィンターシュタイン兄弟の銃弾は・・・。

 
「ハードボイルドだど」は読書好きの内藤陳さんお気に入りの決め台詞でしたね(知っている人は皆無かも?)。
「ハードボイルド」は本来は卵の固ゆでのことを表すもので、非情なこと。人情や感傷に動かされないで、さめていること。またはその様を表す言葉のようですが最近はあまり聞かなくなった気がします。

 ハードボイルドな映画が観たくてチョイスした「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」は、お洒落なタイトルつながりでこの映画の観賞を呼び起こしてくれたのですが、この映画も格別な面白さがあります。主要な登場人物はごつい顔した凄腕の刑事みたいな方ばかりです。

 出世欲ではなく事件の解決と上司へのはなむけのための選択は思わぬ方向へ向かって行き、尊敬するレオを追いやったティティの怨みもまた・・・。

 実話ベースのこの映画を観賞するとその迫力からシリーズの残り2作品も観たくなります。
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