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冷たい雨に撃て、約束の銃弾をのMOCOのレビュー・感想・評価

4.5
「全てを忘れた男の復讐に意味があるのか?
  忘れることができたら復讐なんかするのか?」(チュウ)
「彼は忘れても俺は約束した。行くぞ!」(クワイ)


 フランスでレストランを営むフランシス・コステロ(ジョニー・アリディ)はマカオで家族と倖せに暮らしているはずの娘アイリーンが銃撃され重体という知らせを聞きマカオの病院で面会します。

 子供たち二人と帰宅直後の夫は玄関チャイムに対応して、扉越しに無数の銃弾を受けて即死。銃声を聞いたアイリーンは二人の子供を二階のクローゼットに隠すと、護身用の銃を構えて侵入者が部屋のドアノブに手を掛けると同時に銃弾を乱射し侵入者の一人に怪我を負わせるのですが数発の銃弾に倒れ、二人の子供も命を奪われてしまいます。
 

 アイリーンは奇跡的に生き延びたのですが病室のベッドで起き上がることも、声を出すこともできず、コステロは事件を知らせる新聞の文字を頼りにアイリーンから情報を収集します。
 ・犯人は3人の中国人
 ・1人は耳に銃弾が当たった
 ・復讐して欲しい

  見知らぬマカオで犯人にたどり着けないコステロは宿泊先のホテルのフロアーで室内でサイレンサー付きの銃を使用する音を聞きます。
 コステロは仕事を終えて部屋から出てきた三人の殺し屋と目が合いサイレンサーの付いた銃を目撃するのですが、無関心な態度を装い見逃されます。

 自分の女が部下の若い男と肉体関係にあることを知った組織のボス・ファン(サイモン・ヤム)は3人の殺し屋クワイ(アンソニー・ウォン)、チュウ(ラム・カートン)、ロク(ラム・シュ)に二人の暗殺を依頼し、コステロは偶然その暗殺が行われたホテルのフロアーに宿泊していたのです。

 コステロは警察に「顔に傷がある男を見た」と、情報を提供し犯人の面通しに協力し犯人の一人を確認するのですが「この中に犯人はいない」と証言します。

 警察から解放された「顔に傷のある男」を密かにつけたコステロはホテルのフロアにいた3人に囲まれるのですが、彼らに犯人探しと復讐を依頼します。報酬は手持ちのお金とフランスのレストランと自宅。

 立入禁止となっているアイリーンの自宅を訪れた4人は現場検証をして使用された銃と襲撃の全容を割り出します。
 コステロはアイリーンの残した食材を使い現場の食卓で3人をもてなし契約が成立すると3人を一人づつポラロイドに収めマジックで名前を記します。

 リーダー格のクワイは裏家業を営むいとこのトニーの情報から標的の3人は香港の海鮮街の男達と解ります。
 コステロは自分も銃を持ちたいと言いチュウから一丁の銃を受け取りその腕前を披露します。
 かつてコステロは殺し屋だったこと、その昔頭部に受け摘出できなかった弾丸の影響でいずれ記憶を無くしてしまうと医者に言われていることを告白します。コステロは復讐を依頼した3人の顔を忘れてしまうことを恐れて写真を撮ったのです。

 香港に向かった4人は、ほどなく耳を負傷した男を見つけ夜の公園で3人組と対峙します。
 ・夫婦の殺しはある男からの依頼だったが依頼主は明かせない
 ・幼い子供たちを殺す気はなかったが顔を見られてしまった
 
 全員が被弾する激しい銃撃戦が夜の公園で展開し、コステロが胸を撃たれクワイ達はコステロを抱えアジトに戻ります。それぞれの体に残る銃弾をナイフで取り出したその時、クワンの携帯が鳴りボスのファンから仕事の依頼が入ります「3人の仲間を襲った3人の中国人と1人の白人を始末しろ」と・・・。

 ファンからの電話情報を基に3人が治療している病院に奇襲をかけた4人は3人を射殺するのですが、すぐにファンの部下の殺し屋が襲ってきます。
 街へ飛び出し逃げ切ったクワン達はコステロがついて来ていないことに気がつき危険な街へ引き返します。
 そこにはクワイ達3人の写真を片手に必死にクワイ達を探すコステロが・・・。

 記憶を失くしてしまった依頼者の依頼を続ける必要があるのか?そんな疑問の中、クワイは契約を続行します。依頼を受けた日からコステロとは一時も離れることがないほどの信頼関係があったのです。

 沢山の子供たちの世話をする若い女『ビッグ・ママ』に足手まといになるコステロを預けるとクワイ達は連絡がつかなくなったトニーを訪ね、瀕死のトニーから山ほどの銃を受け取りファンの一家と壮絶な銃撃戦となるのですが・・・。
 
 依頼人と請け負い人(暗殺者)の一見ドライでいつ裏切りがあっても不思議ではない関係はクワイの信条からとてつもない絆となり、二人の仲間もクワイとの深い絆から惜しげもなく命が捧げられていきます。
 大勢の部下を投入するファンの前に、クワイ達はコステロの依頼を叶えることはできずに・・・。

 残されたコステロは3人の死亡を告げるニュースに涙するビッグ・ママと子供たちを見て尋ねます「私は彼らを知っているんだね?」


「とにかく数だけこなすんだ」と言わんばかりに日に何本も観ていた若い頃の映画は、ストーリーの記憶がほとんどなかったのですが、実は目が離せないほどおもしろい映画でした。
 もっと昔は友達にストーリーを伝えれるほど真剣に、大切に映画に接していたのに・・・。


 公園の銃撃戦にも、街の銃撃戦にも、河川敷での銃撃戦にも警察の介入が全くない矛盾はあるのですが、ハードボイルドに期待した私は大満足でした。


「私は彼らを知っているんだね?」
「おじさんの友達、親友よ」と女の子が応えます。
 娘の復讐も、復讐のために雇った男達のことも忘れてしまったコステロは、子供たちの悲しげな顔を見たからなのか朧気な記憶なのか、元殺し屋の血なのか、永い永い祈りを捧げた後、チュウから貰った銃を手にします。そこには記憶をなくしつつあるコステロのために復讐者を忘れないようにとクワイがマジックで書いた「ファン」の名前が・・・。

 娘のためではなく3人の男達のためにコステロはファンの護衛をかいくぐり・・・。


 圧倒的な面白さがありました。この映画のおしゃれなタイトルを目にすると同時期に観たオリヴィエ・マルシャル監督・脚本の『あるいは裏切りという名の犬』『やがて復讐という名の雨』『いずれ絶望という名の闇』が観たくなります。
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