あなぐらむ

主婦と性生活のあなぐらむのレビュー・感想・評価

主婦と性生活(1984年製作の映画)
3.7
堀内靖博デビュー作。
ほんとになんという事もない話なんだけど、ひたすら丁寧に夫、妻両方の葛藤、感情を掬い取り、細かに演出をつけ、画に意味を持たせる事でタイトルにいつわりない、80年代になって、より「働く女性」が前に出るようになった世相の中の「夫婦」像を丹念に描いた小品。
後にメジャーとなる一色信幸の脚本は「誰も誰かの代わりを求めている」という寂しさを漂わせ、若い新婚夫婦をまるで少年少女の様なテイストで見せていく。この「幼さ」と「淡々」がこの年代の感覚ではないか。
お話を引っ掻き回す助演の水木薫がとても魅力的だが、それに打ち勝つ泉じゅんの美しさには息を呑む。
中丸新将と大滝かつ美(新スター扱い。ピンク、AVでもお馴染み)、この頃よく見かける阿部雅彦の歪な関係が、ロマンポルノ的な屈折を作品に与えている。
昼間の情交中に飛行船を見て「空、飛びたいな」「飛ばしてやるよ」というやりとりの台詞の感覚が心地良い。
「雨降らし」を丁寧にやっている所も「映画」らしい良さがある。
ミニマムな現代「日本映画」を作る際のお手本になると作品だと思う。