最近の映画記録、TIFFの1日目にみた「私の好きなケーキ」のこと。
今年の新部門ウィメンズ・エンパワーメントの一本で、イラン映画。「白い牛のバラッド」の監督コンビの作品。
テヘランに住む70歳の老女マヒンが主人公。
ふくよかな優しい人物だが、孤独を抱えている。
序盤、老女たちのパーティが描かれる。
マヒンは寡婦で子供もいない独居生活だが、同様の境遇で家父長制のイラン社会では居場所がない老女たちの集まり。
だが彼女たちの世代はイスラム革命前の文化的な豊かさを知っている…というのが会話から滲み出る。
そんなマヒンが、あるランチをきっかけにタクシー運転手の老人ファルマンズと出会って…という展開。
ドラマやストーリーは前面に出ず、会話劇が続くのだが、二人の表情が豊かで救われる。
ヒジャブを外せる自宅は、精神的・文化的な解放区として描かれる。
終盤、マヒンの自宅で過ごす二人に、ある事件が起こる。
やりたい事は良く分かり、とても好感が持てる映画なのだが、室内劇で会話が続くだけの中盤は眠くなってしまった。
終盤のカメラワークや音響演出は良くて、一挙に目がさめた。
全体としてはやや惜しい出来の作品。