このレビューはネタバレを含みます
エイリアンシリーズを知っていれば知っているだけ楽しめる。
しかしシリーズ未視聴である方が、案外この作品を純粋に楽しめるのではないだろうか。
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ご存じSFホラー金字塔の最新作なわけだが、過去のオマージュ満載で印象的なカットの多くは見知った感が強かった。
「こういうのでいいんだよ」を次から次に重ねられるのは評価に一長一短あるな、と。
と、同時に「これが観たかったんだ!」「これは・・・!」というシーンもあり、観終わった後の感想を纏めるのは一筋縄ではいかない。
オープニングでユタニ社に回収される謎の鉱物
レーザーで鉱物を割ると実はそれは・・・!
オープニングの掴みはバッチリ。
マザーが起動するまでの無音も独特のハリがあってよい。
独自性が光っていた植民地惑星の生活シーン。
本作の顔役レインは植民地惑星からの脱出を図っているが真面目な勤労では宇宙的ブラック企業のユタニ社には養分でしかなく、キツイノルマに振り回される。
雲で一切空の見えない惑星の風景は「マトリックスとかで見たな」なんて思ったりもしたがこういったわずかなシーンでも描かれることにより、この過酷なテラ・フォーミングが「2」の舞台を構築したのだと思うと実に粋な演出だ。
人間であるレインとアンドロイドのアンディが義理の姉弟関係を構築しているのは設定として面白いが、義姉弟であることが本編中で特に活かされたようなシーンはなかったように思える。
アンディくんはアンドロイドだがポンコツなのでよくバグったりして緊張の演出に一役買っている。
ステーション<ルネサンス>に乗り込むときの円形ダクトが開く演出や、不鮮明な定点カメラの映像は「1」「2」に加えて「エイリアン・アイソレーション」「エイリアン・ブラックアウト」のような関連ゲームの緊張した場面を彷彿させる。
当作をプレイした人にはたまらない演出だったのではないだろうか。
悪名高きアッシュと同型のアンドロイド、ルークくんの登場と、オープニングで登場した「1」のゼノモーフのその後の顛末についてのシーン。
磔にされたゼノモーフの遺骸だが、生物としての強靭さや凶悪さを見せつけるとともに、人の業に殉じた神秘的な印象も受けてしまった。
シャカシャカ動くフェイスハガーはキモいとか恐ろしいとかよりも若干かわいいのではないかと感覚がおかしくなっている。伸びる生殖管がセクシー。
アクターが名前を付けていたなんてこともパンフに書かれていたので現場なんかでは余計にマスコット感があったのではないだろうか。
そしてそのファイスハガーは音と体温で寄生先を感知しているというのも面白い設定だった。
音を立ててはいけない。突如鳴る無線。動揺とともに襲い掛かるフェイスハガーというのは『ドント・ブリーズ』みたいだなと思ったがフェデ監督こそドンブリの監督なので得心した。
(そういえばあれも敵に捕まえられたら妊娠を強制させられるやつだったわ。)
あわれ本作最初の犠牲者となったナヴァロだが、(ちょっと画面が見づらかったが)X線透過されたチェストバスターが実にエグイ。
フェイスハガーに絡みつかれて即昏倒していないのは健闘した感じがする。
そして中盤に描写されるゼノモーフ成体への変態シーン。
ここは非常に動きがゆっくりで「1」のビッグチャップそのもののようでもある。
豪快に繭にスタンバトンをぶち込むビヨンくんはこの後しにます。
ビヨンは多感ないかにもなティーンエイジャーで、結果的には害悪ムーブばかりするのだが「プロメテウス」とか「コヴェナント」とは違って研究者などではないのでこの行動もやむなしか、というところに落ち着く。
ロムルス・ラボに安置されていた黒い化合物Z-01
「プロメテウス」の黒いあれか!?と思わせられた。
強力な再生力を得られるが、ゼノモーフの因子が強く、肉体が変異してしまう恐れのあるヤバい薬品。
200年後の未来でもクローン・リプリーを生み出すのに難儀していたところを見るに、ゼノモーフの因子が混ざると肉体変異の影響が大きいことを再認識する。
でもゼノモーフって強靭な身体ではあるけど高い再生力って印象はほぼないんだよな。
追ってきてまーすと監視カメラに見切れるゼノモーフがキュート
ついに登場するF44AAパルスライフル!
弾倉にパルス弾450発自動照準!?残弾量はインジケーター式だ!
海兵隊のよりいいの使ってる?さすがユタニのラボにあるだけはある。
音は「2」と同じだったかも。手の込みようがスゴいね。
エレベーターのところでレインの眼前にゆっくりゼノモーフが近づいてくるシーンは「3」のリスペクトか?
個人的に「3」から入ったのでこのシーンは印象が強い。
「2」の名言「get away from ~」もしっかり押さえている。
こうしてみるとレインはリプリーの女性・母としての強さを持つと同時にニュートのような繊細さ、守られるべき子供としての役どころも併せ持っている。
フェデ監督、詰め込みすぎだぞ!その熱意に感謝。
終盤いろいろあって登場する胎児が変異したオフスプリング。
見た目が超キモい。
背の伸びたヴォルデモートのような見た目は「プロメテウス」のエンジニアをやせぎすにしたようであり、
Z01化合物を打ち込んだ結果先祖返りしましたよ、のような解釈か。
もしかしてZ01ってゼノモーフ因子というかエンジニア因子なのでは?
オフスプリングはエイリアン史的にはニューボーンと同じポジションだが、ニューボーンは愛嬌というか、リプリーに母性を感じるような人間臭い部分があったがオフスプリングはエイリアンとしての残虐さの方が強く、母親のケイを殺害してしまう。
人から生まれたオフスプリングの方がよりゼノモーフ的で、ゼノモーフから生まれたニューボーンの方が人間的と思ったのは面白い対比になっている。
ここだけの話Z01を投与されたケイはクイーンあるいはクイーンのプロトタイプに変異するのではと身構えていたが、本作では良くも悪くもそうはならなかったようだ。
最後は安息の地に向けてアンディを眠らせ、自身もハイパースリープするレイン。ケイも入れたんだろうな?
一抹の不安を残し、「1」を感じさせる終わり方で終了。
次回作があれば期待したい。
見事な作品だと思うが、やはりシリーズからのオマージュシーンというか、ともすればシリーズ人気に全面で乗っかった焼き直し作品となってしまっている気がして、単独の面白さを感じづらい作品。
観ながら過去作品のことばかり考えてしまい本作のことよりもオマージュ元の既存シリーズが改めて粒ぞろいだったなと再認識するちょっと煮え切らない視聴結果にもなってしまった。
冒頭に書いた通り案外シリーズ未視聴である方が、この作品を色眼鏡なしに楽しめる気がしてならない。
この作品からエイリアンの世界に入り、全てを観た後にもう一度この作品を観る、なんて楽しみ方ができるのはとても幸運で幸せなことだと思う。
監督もかなりのエイリアンファンであることから、確実に狙ったカットが見受けられ、そういったシーンを素直に楽しめるか否かで印象が変わってくるだろう。
しかし、これだけの作品が世に出られる余地があるということは、まだまだSFホラーとは題材の通り器の大きいジャンルだと思わされた。