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ジョン・カーターの東京キネマのレビュー・感想・評価

ジョン・カーター(2012年製作の映画)
1.8
2億5千万ドルの製作費使って “どんなもんを創ったの?” という邪な動機で拝見。

金を使ってる感はありますが、ぜんぜん面白くないぞ。 それにだ、何なんだろうこの既視感は…。 『セル』と『ハリーポッター』と『スターウォーズ』と『インディ・ジョーンズ』と『グラディエーター』をごちゃ混ぜにしてガラガラポンして「こんなん出ました」の感じ。

主演のテイラー・キッチュはまったく華がないし、絶世の美女である筈の相手方プリンセスのリン・コリンズはゴリラにしか見えません。 尚かつ、ヘリウム国の皇帝とプリンセス子飼いの騎士はドラマ『ローマ』のカエサルとアントニウスのキャスティングと同じで、これまた衣裳もローマ帝国風。 プロダクション・デザインもクリーチャー・デザインも全く面白くありません。 これだけ金かけている割には、ツケヒゲはバレバレだし、ワイヤー・アクションもワイヤーで釣りましたの感じ。

そもそもお話が散漫過ぎて、冒険譚のお話にしては複雑過ぎますよ。 火星でのお話(今どき!)ってだけでもアップアップなのに、タイムトラベルありいの、超人的パワーの獲得ありいの、火星の人種間抗争ありいの、プリンセスとの恋愛ありいの、で何が何だか解りません。 最初のお宝探しのお話は何処に行っちゃったんでしょうか。

脚色がなってない上に、監督はアニメ出身で実写経験なしってことじゃ、うまくまとまる訳はありません。 原作はバロウズの『火星のプリンセス』。 初版は1917年。 この1917年という時代がポイントでね。 アメリカではインディアン討伐はほぼ終了。 ハワイも強奪して、フィリピンでの虐殺も19世紀末に完了してますからね。 後は支那大陸をどうやって強奪するかなんて余裕こいている時代ですから、そういった文脈でこの冒険譚もあるという見立てもある訳でね。 悪の緑色人(これ映画ではソダンガ国と一緒に扱ってます)が日帝、ソガンダ国が満州、赤色人のヘリウム国が国民党、現地人ザークが漢民族のメタファーじゃないかというのもあながち妄想とは言いきれないような。

さすがにこれだけ劣化した日本映画でも、まさか『冒険ダン吉』を映画化しようなんていう強者は居ないでしょうし、そもそも日本の冒険譚だったら世界平和、文明社会の構築なんてのがテーマになるんですが、アメさんの場合は “悪の土人を殺しまくるオレって格好いい?” だからね。 民度が知れるっつうもんです。 ディズニーでこれだからね。 おととい来やがれです、ハイ。
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