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家族Xのminorufukuのレビュー・感想・評価

家族X(2011年製作の映画)
3.2
専業主婦の妻とリストラ寸前の夫とフリーターの息子という一見平凡な家族の日常を描いた作品。

地味で、おそろしく不穏で、爽快感の欠片もない重い作品。
冒頭、家族の集合写真を1分間ずーっと映していてその間も手持ちのカメラが小刻みに揺れていて何か怖い。映画開始から5分はセリフ無し。3分の1くらいは主演の南果歩が黙々と家事をこなすシーンなのだが、化粧っ気と生気のない無表情な顔が怖い。料理や掃除の仕方も異常に几帳面でミリ単位の整然さを求めていて病的。たまにみせる小さなため息が本当に不幸そう…
家族のために毎日毎日食事を用意し、洗濯をし、ゴミを出す妻だが夫の帰りは夜遅く、息子はバイトで朝帰り。この家族はほとんど会話がない。仲が悪いわけではなく、無関心な感じ。深夜に帰宅し、サランラップでくるまれた料理をレンジで温めもせずラップを少しめくった隙間から一口だけつまんでビールを飲む夫の無神経さがひどい。
家族三人ともそれぞれ自分の世界で生きているのだが、そこでの彼らの孤独で取り残されてる感満載な様子が全然笑えない。
やがて妻は精神的におかしくなって家を飛び出してしまうのだが、その際、夫と息子が必死で妻の行方を探すあたりは少しだけ救いがある。

それにしても僕が見る作品の中で精神に異常をきたす主婦の名前は大抵ミツコかミチコである。何でだろう?
全世界のミツコさんごめんなさい。
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