このレビューはネタバレを含みます
地方の村の巨大なゴミ処理場で働く主人公は、村八分の末に自殺した父の最後に犯した罪によって村人から蔑まれ、更に母がギャンブルで作った借金の返済のため違法の仕事に手を染めるなど鬱々とした日々を送っていた。
そんなある日東京から幼馴染のヒロインが帰村する。広報に就任した彼女の進言から主人公はゴミ処理場のPR的な役割を担うことになるのだが......という話。
「新聞記者」などの藤井道人監督の最新作。主演は横浜流星。事前情報を知らない状態で鑑賞。M・ナイト・シャマラン監督作で同名の映画とは無関係（笑）
壮絶な過去から心閉ざして絶望的な人生を送っていた主人公が、幼馴染の助けで成功しつつもやがて過去の罪から破滅していく過程を地方都市の因習や社会問題とともに描いたサスペンス映画。鬱アンド鬱な展開なので好みは分かれそう。
観客を惹きこむ刺激的なストーリー、藤井監督特有の光の明暗の対比で見せるスタイリッシュな映像も相まって最後まで飽きない出来。能の要素を絡めた演出からのタイトルバックもカッコ良かった。引きで見せる自然豊かな集落の風景も神秘的で魅せられた。
主演の横浜流星も好演していて、序盤の陰を感じる髭面な容貌の荒んだ演技から成功後のさわやかで純朴さを備えたイケメンへの変化もメリハリがあって良かった。古田新太ら脇を固める重厚な俳優陣との演技合戦も見ごたえ十分だった。元格闘家である一ノ瀬ワタルの誰も共感できないような粗暴で不快な悪役演技も印象に残った。
ただ、ストーリー面やそもそもの設定からしてモヤっとする点が非常に多い。
まず、黒木華演じる幼馴染が周囲とうまくいっていない主人公を一目も気にせずやたらと重用しようとする立ち振る舞いは少しイライラしたし、実際トラブルにつながっていた。また、主人公の破滅につながる死体遺棄行為についても、ヒロインが暴行を受け主人公も死につながるくらいに殴られ続けていたことを考えると警察呼べば普通に正当防衛が成立するのでは？と思った(古田新太にもみ消されそうだけど)。あと、死体遺棄が明るみになってから結末までの展開がかなり唐突な気がした。そして一番気になったのは父親があんな大事件起こしたあとに主人公親子が村にそのままとどまるかなあ？ということ。これらの違和感が些細なことかもしれないが、せっかくの面白い作品なので細かい部分をもっと詰めてほしかった。主人公と幼馴染、中村獅童含めた幼少期をもう少し描くとか、主人公の古田新太や村全体に対する憎悪を明確にするとか。
といっても感情を揺さぶられるシーンも多くて非常に好みな作品。主人公の職場後輩やヒロインの弟には感情移入させられた。特に後輩が出世した主人公に代わり職場でいじめを受けることになるのに主人公を逆恨みすることもせずに慕う姿は好感がもてたし、その彼が借金を返済して解放される直前に逮捕される流れはもの悲しかった。エンドロールのあとにヒロインの弟が村から出ていくのは希望がもてるラストだった。
最近は良い人な役柄が多い杉本哲太が、反社組織の元締め役で凄みのある演技を見せていて迫力あった。あまりにハマりすぎていてニヤリとさせられた（笑）
