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サーチライト-遊星散歩-のminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

サーチライト-遊星散歩-(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

認知症の母と暮らす女子高生が主人公。
なんとか家計をやりくりしていた主人公だが母の病状も徐々に悪化し、経済的にも行き詰まることに。彼女は退学となった高校の先輩が働くコンカフェでバイトすることになり、やがて更なる高額の報酬を求めて客とJK散歩をはじめるのだが......という話。

舞台挨拶で監督が語っていたとおり、こじんまりとした世界観とストーリーではあるのだが、芝居と情景描写でじっくりと表現するタイプの社会派な作品で見応えがあった。
父を亡くしてその後二人で生きてきた母娘の絆が丁寧に描かれていたし、困窮に苦しむ主人公と同じく貧困家庭の境遇からか彼女を気にかける同級生男子の姿は好感がもてた。
気になった点として、台詞に頼らない演出は好みだったが、やや説明不足だったり腑に落ちない部分があった。徘徊癖のある母への心配や友人たちに知られたくない事情もありそうだが、主人公がJK散歩に至るまで一切真っ当なバイトする様子が見られなかったのは疑問に感じたし、主人公の家庭の事情を担任教師が全く把握していないのも違和感あった。
また、本筋の物語に比べコンカフェやJK散歩の掘り下げが中途半端に感じた。あの手のお店で本名で登録するのは相当リスク高いしあり得るのだろうか? あと、警察沙汰になったあと生徒二人だけで帰らせる教師も無責任に感じた。
とはいえ、主人公の葛藤や彼女を救う同級生男子の献身的な行動には胸を打たれたのも確か。特に母親が主人公に対して「赤ちゃんの匂いがする」と称していたエピソードは秀逸で、それを終盤に同級生男子が主人公に「好き」の気持ちを伝えるワードとして使用されるのはものすごく意表を突かれてそして感動した。最後に母親が主人公のために自ら医者にかかることを選択するのもしんみりとさせられた。苗字で呼び合っていた主人公と同級生男子が最後はお互いの名前を呼んでいたのも微笑ましかった。

主演の中井友望は以前「かそけきサンカヨウ」で見たことがあって、役柄のタイプも地味目で今作と似ていたのだが、演技とその説得力が段違いにスケールアップしていた。本作のヒロインは相当難役だったと思うのだが、舞台挨拶で「演じていて難しかったことは?」という問いに対して「無い」と答えていたことが印象的だった。おそらく演技プランの実践が上手くいっていた証拠なのかと。

それにしてもJK散歩のオプション得るためのシャンパンが5万円で、本番行為に至るまでには更に5万円払うってクレイジーだなあと思った。女子高生と遊ぶのにはそれだけの価値があるのかなあとも思ったが、よく考えるとあのコンカフェで本物の女子高生なのはおそらく主人公だけなんだよなあ......
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