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火の鳥 エデンの花のminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

火の鳥 エデンの花(2023年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

地球で罪を犯し辺境の惑星エデンに逃亡してきたヒロインとその恋人は、この地を新天地にしようと暮らし始めるが資源と水に乏しい星の開拓は難航を極める。その後、ヒロインは子供を授かるも、井戸堀り作業中の事故で恋人を失ってしまう。やがて出産した息子と新たな生活を始めるも、ヒロインは寿命の問題から十数年のコールドスリープを選択する。しかし、機器の故障で1300年眠り続けることになる。
目覚めた彼女は息子と異生命体の交配で繁栄した巨大な都市に女王として迎えられる。やがて年老いたヒロインは地球への強い望郷の念にとらわれることになる。彼女は宮殿で出会った従者の少年とともに地球を目指す旅に出るのだが......という話。
火の鳥望郷編の映画化。手塚治虫の原作マンガは過去に読了したはずだが、内容をかなり忘れた状態で鑑賞。

あとから原作を確認したのだが、原作改変は割と少ないはずなのに昔にマンガを読んだ印象とこの映画版とではかなり違った印象を受けた。原作が書かれた時点では生命や定番の物語の常識を覆す内容でセンセーショナルな感じだったと記憶しているが、自分自身がその後様々なフィクションに触れて歳も重ねているためか観賞中もあまり衝撃も受けなかった。
ただ、そんなこちらの事情関係なく、原作の魅力をうまく映像に反映できていないとは思った。人類やその文明の業を描く火の鳥というコンテンツのテーマも伝えきれていなかった。
まず、近親相姦の要素をカットしているのはコンプラに厳しい時代とはいえ、物語上は明らかにマイナスだったし、ヒロインの旅の原動力となるはずの地球への思いがそこまで強調されていなかったので命をかけた宇宙飛行の意義が感じられなかった。あと、宇宙船を操縦するのがあの少年である理由を設定として作ったほうが良かったのかも。また、善良なエデンの国民たちが外部の者の手により悪徳を植え付けられて破滅していく過程の見せ方が駆け足すぎてカタルシスを得られなかったのも残念。
主演の宮沢りえの演技はさすがだったものの、専業声優とそれ以外の役者との芝居の温度差が大きくてノイズになっていた。
ただ、アニメーションとしては宇宙空間でのデブリが漂う描写や荒廃した地球の描写などは表現として目を見張る部分があった。あと主題歌は本当によい曲。

星の繁栄のために火の鳥が介入した描写がかなり薄く描かれていたこともあり、知らないで観たら火の鳥の映画とは気づかなそう(笑)
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