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蜜蜂と遠雷のminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

かつては天才少女と称賛されていた主人公は母の死をきっかけにピアノから遠ざかっていたものの、長いブランクの末に世界的ピアニストへの登竜門とされているコンクールに参加することになる。その予選会には主人公と同じピアノ教室で共に習った幼馴染みをはじめとする個性的なピアニストが集っていて、彼らは互いに刺激を受けつつその才幹を発揮していって......という話。
直木賞と本屋大賞をダブル受賞した恩田陸の原作小説の映画化。主演は松岡茉優。

ピアノのコンクールを題材にした作品は特定の悪役と分かりやすい因縁を設けてスポ根風に盛り上げていく傾向が強い気がしていたが、本作は競い合うライバルであるはずの境遇の違う天才たちが共鳴しあって、それぞれの求めるスタイルを模索しつつ全員が高みに到達する姿を中心に描いている。しかも説明セリフ少な目で極力映像と音楽だけで表現しようとしている点が素晴らしいと感じた。
正規の音楽教育を受けずに社会人の立場から参加した楽器店員の演奏が、ブランクからか本来の調子のでなかった主人公に感銘を与えて復活させたり、本選直前の最後の演奏を前に悩むエリートの幼馴染に今度は主人公がアドバイスして背中を押してあげるなど、打算なく良い音楽を作り出そうとするエピソードに鳥肌がたった。恩田陸特有の魅力的な天才の描き方を比較的うまく映画に落とし込んでいるように感じた。
本選から登場するキーパーソンの鹿賀丈史演じる癖のある指揮者は、当初は共演する天才たちの演奏を認めない姿勢を見せていたのだが、本番の演奏の最後では彼らの音楽を大満足で称賛する表情を浮かべているのも印象的だった。
エンドロールでコンクールの結果がわかるのだが、少し意外な結果に感じたものの正直順位はどうでもよくなるほどの熱量に満ちた作品だった。

気になったのは、本作は割と原作ファンからは不評っぽいということ。確かに映画はあらすじや人物相関など大胆にアレンジされていて、結構別物になっていた印象はあったが僕はどちらも好みだった。でも、原作先に読んでいたら結構戸惑いそう。
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