るるびっち

姫君海を渡るのるるびっちのレビュー・感想・評価

姫君海を渡る(1935年製作の映画)
3.4
キャロル・ロンバードは、グレタ・ガルボに少し雰囲気が似ている。
だから本作でも威厳のある、スウェーデン王女を演じている。
ガルボなら本物の王女を演じるだろう。コメディエンヌのロンバードは、ニセ王女を演じる女優志願の詐欺師を演じている(ややこしい)。
なので、尊大な言い回しや片言の英語で笑わせる。

彼女の相手が軽佻浮薄な、アメリカンのフレッド・マクマレイ。
図々しい陽気な元ペテン師で、改心して正義に目覚めた男。
ビリー・ワイルダー監督ファンには『深夜の告白』『アパートの鍵貸します』で、お馴染みの悪役だ。
彼は本作のようなコメディや、ディズニーの家族映画に出演していたので『深夜の告白』の殺人者役は嫌がったそうだ。当然である。
喩えるなら、寅さんの渥美清に殺人者をやらせるようなものだ。
それも寅さんとまったくイメージの違う寡黙な殺人者を演じさせるのではなく、寅さんのキャラのままで実は中身は殺人者というような役の当て方なのだ。
この辺りにワイルダーの捻りの面白さと、意地悪さを感じる。
本作はワイルダーにイジられる前なので、陽気で図々しいがロンバードを助ける善良な男を演じている。変な影を付けられていないのだ。

前半は『レディ・イヴ』のような詐欺師とペテン師のラブコメなのだが、中盤にロンバードの部屋で死体が出てきてからミステリーになる。
本来、死体が出たらワクワクと面白くなるものだが、ラブコメ色が落ちるので残念な気もする。
『影なき男』シリーズのように、カップル探偵の軽妙なミステリー・コメディを狙っていたようだ。
詰まらなくはないが、もっと騙し合いのスクリューボール・コメディのままでも良かったかな、そっちも観たかったなと思った。
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