るるびっち

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのるるびっちのレビュー・感想・評価

3.9
居場所の話。
思春期には家庭も学校も仲良しグループもちょっと違う、自分の居場所じゃないと感じるのだろう。
最初にグウェンが、自分に合うバンドを探していると語る。
彼女にはバンドも家庭もヒーロー活動の世界すら、ぴったりとハマらなかったのだ。スパイダーグループに参加するが、マイルズを巡り仲間と衝突してしまう。

そのマイルズは蜘蛛に刺されてスパイダーマンに選ばれた。だがそのギフト(ヒーローの力)が、実は自分のための物ではなかった。
人のギフトを拝借していたと言われ、彼もまた居場所を探す。
恐らく彼を刺していない本命の蜘蛛が居るはずだから、後編はきっとその蜘蛛を探して問題解決するのかな?

前作も色々入り乱れてごちゃごちゃな世界だった。続編は更にインフレが進み、ごちゃごちゃはマイルズだけでなくグウェンにも及んでいるから話が長い。
しかもマルチバースルールで、似て非なるスパイダーマン人生を描くから蛇足感が否めない。非なるけど似てるから二つもいらんよ。

敵役は自分の穴に入る穴男。阿部公房か!?
不条理文学じゃないか!!
自分だけでなく世界中、更にマルチバースにも穴を開けていく。
虚無だよ虚無。
穴だらけの彼は、自分の体すらままならない。人生もままならない。
だから人の人生にも穴を開けていく。
不条理な・・・いや洒落な。
混乱と絶望を全振りの前編は、長過ぎるがそれなりに効果的だった。
だが後編、混乱を収束できるのか? 作品自体に巨大な穴が開いていないことを祈る。
るるびっち

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