るるびっち

コンクリート・ユートピアのるるびっちのレビュー・感想・評価

コンクリート・ユートピア(2021年製作の映画)
4.3
集団から如何にして、排他主義と独裁者が生まれるかを描いた寓話。

大災害の後、 生き残ったマンションの住民が限られた食料を守る為、 周囲の部外者を排除していく。
自分たちを守る=自分たち以外の者を排除する。
そうなると「自分たちという輪」の中に入っていないと、たちまち排除される側に転落してしまう。もう自由はなくなる。

世界中で見たような、非人道的な光景が重なる。
匿われた弱者が、こっそり暮らす姿は『アンネの日記』のようだ。
反対者が自己批判を強いられる姿は『文化大革命』を想起させる。

4人の人物を中心に描かれる。
1人は独裁者に。
1人は愛の為、悪に染まる。
1人は独裁者の秘密を握る密告者。
そして危機の中でも、人道主義に生き抜く女性。
誰になりたいか?

福田村事件やホロコーストのような、排他性による虐殺は遠い昔の話ではない。
社会保険料の値上げで老人の年金や医療費の為に、現役世代が苦労すると若者は老人を憎む。
怒りの矛先を政府ではなく高齢者に向けるのは、分断を利用する支配者に踊らされているだけだ。
国民は財源が無いと洗脳されている。
アメリカにちょっと要求されれば、コロナワクチンにホイホイと出費して平然としている。金が無いはミスリードだろう。
そんな作り話を信じて老人を憎む。

政治の無能や官僚の誤魔化しを追及せず、弱者を排斥する。
今回の災害で『復興増税』を緊縮派政府が決めれば、国民は政府ではなく被災者を憎むかもしれない。
災害被害者を増税加害者として迫害する。本末転倒だ。
実際セコイ対策が目立つ。『被災者に最大20万円貸し付け』等。
家を失った人をローン地獄に落とす政策。
弱者救済ではなく、自殺への誘導か?
節約志向の政府は、アメリカに要求されないと中々金は出さない。
国債発行は子孫への借金として、被災者は見送り。
現在の国民を救わず、未来の子孫などない。
ケチってると国自体が滅ぶぞ。

一億総中流から格差社会へ転落したせいで、弱者や異端者を足手まといとして切り捨てる地獄の番犬が増えた。
そうした番犬どもが「自己責任」と吠える。
余裕がある時は自由を尊重して人道主義を唱えるが、ちょっと危機が迫ると「マスクをしない奴は非国民」という自警団に変貌する。
肝心な時に、人権派弁護士たちは口をつぐんでいた。
そういう連中が、モンスターかといえばそうではない。
主人公の最後の台詞が、それを象徴している。
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