南インドはタミルの大スター、“大将"ヴィジャイ主演作品。

《2014年。コルカタの刑務所からチュンナイへ脱走した”刃物”カッティはバンコクへの逃亡を企てるが、空港で出会った女性に一目ぼれしてしまい、出国を止めてしまう。その夜、街を彷徨いていたカッティは自分と瓜二つのジーヴァが銃撃されるところを目撃し、彼を病院に連れてく際に自分の身代わりとして追手に捕まえさせる。自由の身になったカッティだったが、ジーヴァが地方の農村の問題に取り組む社会活動家であることを知ると、次第に心に変化が起き始め、ジーヴァの活動を引き継いで大企業と対峙していくのだった》

脱獄犯が自分とそっくりな社会活動家と入れ替わり、農民達の生活を奪う多国籍企業の横暴に立ち向かう内容。
ド派手なアクション、豪華なダンス、テンポの良いコメディ。
インド映画が最も得意とするエンタメと、現実の社会問題を色濃く反映したメッセージが奇跡の融合を果たした大傑作。

https://youtu.be/pDRJJpuYMqA?si=lf0p7aGgWSShBODI

事前情報なしで鑑賞したので最初はどういう映画なのかさっぱり分からず、金と女にしか目にない悪党が調子に乗る展開が続くので不安だったが、カッティがジーヴァの正体を知るにつれて本筋が明確になっていき、それに合わせて段々と面白くなる。

高いエンタメとメッセージ性の両立、一人二役など、物語の構成が良く出来ているが、特筆すべきは主人公カッティの力の使い道。
カッティは詐欺師であり、社会を良くしようとする活動家とは真逆の犯罪の世界で生きてきた人物だ。
なので、影で暴力で脅してくる大企業に対しては、ジーヴァや村の人々には無い同じ暴力で対抗するので、ここで人が入れ替わったという設定が活きてくる。
しかし、法治国家である以上、白黒を付けるのはあくまでも法の元、すなわち裁判であり、その戦いにおいてカッティは人々を団結させてデモとストを行う非暴力運動を用いて駒を進めていく。
これはガンジーやマザーテレサなどの活動家の行動をリスペクトしたものであり、本作と同じく2014年に製作された社会派映画『グローリー/明日への行進』の中で、支持者に向けて演説を行うキング牧師の姿と重なる程にパワフル。
かつて『RRR』でビームが拷問を受けた際にラーマが暴力に頼らない人々の団結する力を見出しつつも、結局暴力で解決してしまったことを考えると、本作は"どのように立ち向かっていくか"という行動と選択についてまだ正しく描けている。

本作は良識人とは言えない自己中心的な男が歪んだ社会に迷い込み、試練を乗り越え人々を救い、社会と自身を変えて元の世界へ帰っていくヒーローズジャーニーである。
神話が生まれた時から存在する、見ていて誰もが心動かされる王道的スタイルを世襲しつつも、ベースとなるのは現実で起きてる社会問題であり、かつて平和をもたらそうとした先人の足跡を辿るもの。
この頃はインド人民党（BJP）が第1党となり、BJPが推し進めるヒンドゥー至上主義がインド社会に浸透しつつある時期だった。
世界が分断され憎悪が日に日に増してく今、見えざる人々に寄り添う昔から大切に伝えられてきた教えを本作はもう一度教えてくれる。

正直、『RRR』『バーフバリ』をも凌ぐ完成度。
ラストは泣くわ！こんなん！

インド映画好きには必見の超弩級痛快作！！
鑑賞できるタイミングを絶対に見逃すな！！！

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我らがタミルの“大将”ヴィジャイの“若大将”時代の作品。
脱獄囚の詐欺師が社会活動家と入れ替わる。
作品を通じてインドの社会問題について鋭く提起する我等が“大将”、今作では多国籍企業による環境破壊問題と農民の窮状、それを報じない報道機関の責任を世に問う。この時代の“大将”の作品は、結構ストレートにメッセージを訴えているのがとても良い。
お約束のように、今作でも一人で二役を演じる“大将”。先日“大将”の2024年最新作を鑑賞したのだけど、10年前の作品である今作と比べても、“大将”の見た目がずっと全然変わっていない、というのが本当にスゴい。ちなみにその最新作「The Greatest of All Time」では、もっと若い年代の頃の役を演じていたりして、どの形態がナチュラルな“大将”の姿なのか混乱してくる。
相手役のヒロインが、何度も“大将”と共演しているサマンタちゃん。まさかの「マッキー🪰」ネタをぶっ込んできたのにはメチャ笑えた😆 ニール・ニティン・ムケーシュの役柄が、やり手社長に見えて、案外マヌケでトホホ感満載だったのもイイ感じ。
そして「マスター 先生が来る！」でもそうだったけど、最後の最後にちゃんと“ケジメ”をつけて物語を終わらせる、というのが本当に素晴らしい。ストーリー冒頭の脱獄犯に復讐をされないかが心配だけど。
こうして“大将”の過去作が劇場上映されるのは本当にありがたい！“大将”作品だけでなく、新旧問わず、いろんなインド作品をドンドン配給公開していっていただきたいです！

• #2024劇場とらキチ
• #インド魂

若大将ヴィジャイ主演の2014年公開作品。
まだ、ヴィジャイが若い！（笑）ダンス多め、アクションもありのエンターテイメント作品。
作品の背景として、インド国内のグローバル企業の進出と水（水道）の問題が描かれる。インド映画は、エンタメ作品でも、社会問題が取り上げられることが多いのが良き。また、ラストのカディルの描かれ方が、哀愁があって良かったですね。
2024年11月16日（土）＠京都・出町座

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