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ロルナの祈りのRのレビュー・感想・評価

ロルナの祈り(2008年製作の映画)
4.4
ダルデンヌを味わおうということで、まだ見てなかった本作を。いつものダルデンヌらしく、問題の真っ只中にいるしかめっ面の主人公に、ビタッとカメラがはりついて唐突に話が進んでいく。本作はいつも以上に問題がややこしく、何が起こってるのか最初は非常にわかりづらい。最初の20分くらいかなり眠くなって、珍しく落ちてしまいました笑 気を取り直して、もう一度。もうちょい進むとストーリーの核がわかり始める。ロルナはアルバニア出身のベルギーへの移民で、国籍を得るために裏ビジネスを通してクローディという男と偽装結婚をしてるんやけど、この男は薬物中毒者。同じくベルギーの国籍を得たいロシアの男が現れて、ならロルナと偽装結婚を組もう、と考えた仲介人が、邪魔やからクローディをOD死させようとする。が、ロルナは、殺すまでしなくても、ヤク中やからDVされてることにして離婚って形でいいのでは、と何とか話をそっちに持っていこうとする。ただの偽装結婚のはずやのに、不器用にしか生きられずロルナのためにドラッグをやめるよ!と決意したクローディに、ロルナは情がうつってしまったのだ。で、その離婚プランが成功するかどうかが前半のサスペンスとなり、どうなるだろう、どうなるだろう、と見守ってると、大胆にプロセス省略され、あっという間に結論後の動きが展開していく。この移行の斬れ味にはホントに驚いたが、その後もロルナの困難は続いていく。ロルナが何のためにそんな詐欺行為に加担してるのか、途中で明らかになるんやけど、やっぱ見てて思うのは、真っ当な人生を送りたいと思ってる人は、どれほど純粋な人で、どれほど目的がまともであっても、不正義に加担してしまってはならないということ。不正義は、ひとたび巻き込まれると、そのスパイラルから抜け出せなくなってしまう可能が高すぎる。だからある意味、ロルナの苦悩は自業自得でもあるんやけど、そんな彼女に寄り添うような、やわらかいエンディングが印象的。それまでは音楽のない陰鬱で厳しい、現実的なシーンばかり。そこは、さすがダルデンヌ、ひと時も目の話せない緊張感とテンポとパワーで、一気に見せきったあと、狂おしくもやさしい愛の切なさをじーんと感じさせる。見事というほかありません。主演女優のアルタドブロシとガリガリのジェレミーレニエがほんとにすばらしい。チャリのシーンが脳裏に焼きついてはなれません😭 悲しい。
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