B5版

ボウリング・フォー・コロンバインのB5版のレビュー・感想・評価

3.0
今だからこそ見たくなった作品。
コロンバイン銃乱射事件を筆頭にアメリカの銃事件の要因を紐解いていくドキュメンタリー。
内容はかなり勉強になったし、ムーア監督の行動力や肝の座り具合はひたすら尊敬している。
しかし今作の意図的な絵作りの仕方にはちょっと辟易したかな。

ボウリングが彼らを強行に走らせたのか?
マリリンの音楽が彼らを凶暴にしたのか?
たった一つの要因が取り除かれればハッピーエンドにはなるのか?

安易な切り口で問題を解決しようとするマスコミへの反語を用いた後で、最後にライフル協会の人間を悪役らしく登場させる行為はいかんせん作為的に感じる。
銃の普及率は問題の根幹にあるように思われる。
アメリカでの銃の死傷者数を見てもそこを疑うことはナンセンスだ。
だがいじめる加害者が、意味をなさない規制が、問題を放置する学校が、偏った差別思想が、不安を食い物にするメディアに責任はないのか?これらが複雑に絡み合う限り被害者を再生産していくのではないか?

Kマートでのやりとりに心が少し浮上するも、やはりラストは暗雲たる心地で『WHAT A WONDERFUL WORLD』を聴くハメになる。
2002年に危惧されたよりも、より悪化の一途を辿ったように思える2022年。
この歪んだ世界で、今後自分は被害者にも加害者にもならないといったい誰が言いきれるだろうか…
B5版

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