ハル

暴力脱獄のハルのレビュー・感想・評価

暴力脱獄(1967年製作の映画)
4.0
ルークは、権力や体制に抗うばかりでなく、神をも否定する人物として描かれている。それは、町山智浩氏の指摘を待つまでもなく、ルーク自身が神(イエス・キリスト)を彷彿とさせるカリスマであるからだ。これまで色んな映画を観てきて、彼以上に印象に残ったキャラクターを見たことがなかった。

その彼が軽犯罪(パーキングメーターを破壊した)を犯すに至った詳しい背景は語られない。そもそも、そんなことを深く考える自体が野暮なのである。カリスマとしての彼には、刑務所の中も外も窮屈な場所にほかならなかった。そうして、神の存在をも否定した彼は、神のように生きたことによって、図らずも、他の刑務所仲間たちを救済したのである。

したがって、この映画は単なる反権力・反体制の作品ととらえるべきでない。しかのみならず、「暴力脱獄」というお粗末な邦題によって貶められるべき作品でもない。「COOL HAND LUKE」という原題こそが、ルークのカリスマ性を見事に言い表している。
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