ハル

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドのハルのレビュー・感想・評価

4.0
第一次世界大戦のドキュメンタリー作品。100年前のモノクロ映像に色を施し、さらに兵士たちのインタビュー音声をまじえて、映画としたものである。

16、7のまだ年端もいかぬ少年たちは、年齢を偽ってまで兵士に志願した。戦場に対して無根拠な憧れがあり、兵士として戦えば英雄として尊敬されるのではないかと考えたからだろう。

しかし、厳しい訓練を経て向かった戦場は、そんな憧れからは程遠い、凄惨を極めたものであった。無煙火薬、機関銃の登場により、戦争は近代化し、残虐を極め、無垢なる少年たちの幻想を粉々に打ち砕いた。砲弾の嵐と銃弾の雨が彼らの前に容赦なく降り注ぎ、後には累々と折り重なる屍体だけが残った。

この映画を取り巻いているのは、戦争の悲惨さばかりではなく、そこに参加する人たちが醸し出す不気味さである。

既に述べたように、第一次世界大戦の英軍には、年端のゆかぬ少年たちが年齢を詐称してまで志願している。戦場に対する無根拠な憧れや純粋な愛国心があったからだろう、彼らからは戦争に対する恐怖がまるで感じられない。戦闘行為をしていないときは、紅茶を飲んだり、遊戯に耽ったりと、底抜けに明るい。戦争ではなく、修学旅行に参加しているような気配があって、その異様な明るさが現実の暗さと奇妙に対比を為していて、何とも不気味なのだ。

修学旅行に参加するような気持ちで戦争に参加した少年たちは、戦争の現実を知り、それが無意味であることを知る。そして、軍の頸城から放たれ、帰国した彼らには、さらなる過酷な現実が待っていた。国のために戦った英雄であるはずの彼らは、戦後、自国民からは全く歓迎されず、就職の口さえなかったという。

「国のために戦ったのに、誰からも感謝されなかった」

そういうニュアンスの言葉をある兵士が漏らしていて、私は悲しくなった。

彼らは何のために戦ったのか? 果たして、あの戦争に意味はあったのか?

そんなことをいくら考えても答えは出ないけれど、あの過酷な戦場で、彼らは間違いなく、「生きていた」と言うことはできるだろう。
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