ハル

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のハルのレビュー・感想・評価

4.0
仮に「四姉妹モノ」というジャンルが存在するならば、オルコットの「若草物語」は、アメリカのみならず、世界中の人々を魅了した作品として、いついつまでも語り継がれるにちがいない。実際問題として、これまでに多くの映像作家たちが、この美しい物語を後世に伝えようと、手を替え品を替え、スクリーンに映し出してきた。

グレタ・ガーウィグ女史もその一人である。

女史は、それまでにない新たな視点によって、物語に命を与えた。現在と過去を行き来する手法にいささか混乱した方もおられるだろうが、現在と過去とで映像の質感(ライティングを変えてある)が変わるので、全くついていけないというほどでもあるまい。

現在と過去を交互に描いたのは、「幸せに綻びが見えた現在」と「幸せだった過去」を、対比的に見せようという狙いがあったのかもしれない。既に述べたように、現在と過去では映像の質感が違っていて、ことに回想シーンでは、光の当て方が現在パートと異なる。一見すると、19世紀の絵画を現出させたように美しい仕上がりになっているのだが、「斜陽」や「黄昏」という言葉が滅びのイメージを含むように、「この幸せはいつまでも続かない」という暗示を含んでいるような気がしてならなかった。事実、四姉妹は、幸せのうえにいつまでも胡座をかくわけではなく、数奇な運命にさらされることになるのである。

主演を務めたのは、「レディ・バード」で主役を演じたシアーシャ・ローナン。こじらせ気味の女子高生を演じた彼女も、以前よりは幼さが抜けて、大人の女性へと進化した感がある。決して不美人というわけではないが、姉役のエマ・ワトソンと並び立つと、いささか見劣りがしないでもない。ただ、レディ・バードでの活発なイメージも手伝っているためか、男勝りのジョー役にはピッタリの配役と言えた。

物語は、現在と過去の間を、一艘の舟のようにたゆたい、やがて、希望ある未来へと収束していく。そして、さらにそれは一冊の本にまとめられ、後世へ伝えられることになるのである。


鑑賞した後、不思議な余韻が残った。その正体に気づくまでにさほど時間はかからなかった。

この映画は、「若草物語」の映像化でありながら、同時に、原作者オルコットの伝記映画としての側面も備えているのである。実に見事な試みだと思った。
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