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Mank/マンクのハルのレビュー・感想・評価

Mank/マンク(2020年製作の映画)
4.0
「市民ケーン」は、実在の新聞王ウィリアム・ハーストをモデルにして作られており、アメリカンドリームの本質を突いた内容になっている。本作はアカデミー賞9部門にノミネートされたが、ハースト本人がその内容に抗議したことで上映妨害運動が起こり、オスカーを獲得したのは脚本賞のみにとどまった。その脚本を執筆した人物こそ、ハーマン・J・マンキーウィッツことマンクである。

本作「マンク」は、マンクの視点から、「市民ケーン」誕生の裏側を描いている。本編には、市民ケーンのモデルになった新聞王ウィリアム・ハーストをはじめ、当時のハリウッドで活躍していた実在の人物が次々に登場する。画面は、「市民ケーン」の撮影技法を意識してか、モノクロームに統一されており、まさに「ハリウッドの光と影」を表現する案配になっている。「ハリウッド黄金期」と呼ばれた1930年代から40年代のハリウッドは、世界恐慌後の不況にさらされ、共産主義の蔓延や第二次大戦の開戦といった諸問題で揺れていた。それを見つめるマンクの視線はウイットに富み、風刺に満ちている。彼に扮したゲイリー・オールドマンの演技は圧巻だった。

本作は、デヴィッド・フィンチャーが父のジャック・フィンチャーの脚本を映像化したものである。フィンチャーは、過去に、Facebookの創始者マーク・ザッカーバーグを主人公にして、現代の「市民ケーン」であるところの「ソーシャルネットワーク」を撮っている。その彼が本作を撮ったのは運命だったと言えるだろう。
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