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ナイトホークスのsleepyのレビュー・感想・評価

ナイトホークス(1981年製作の映画)
4.2
大晦日は大変だ****




  原題:Night hawks、1981年、米、カラー、99分。
12月31日。夜。ニュー・イヤーズ・イヴのNY。囮捜査の名コンビ、ダシルバ(スタローン)とフォックス(ウィリアムス)には大晦日も新年もない。街の強盗、麻薬、ひったくり等々、地道だが危険などぶさらいのような毎日。

一方同じ大晦日のロンドンで起きる無差別爆弾テロ。男の名はウルフガー(ハウアー)。国際的な一匹狼の雇われテロリスト(でも女相棒シャッカ(バーシス・カンバータ)がいる)。一般人をまきこんだため、組織から疎まれ孤立。彼はパリへ飛び整形。そして厳寒のNYへ。彼の正体・足跡をつかんだインターポールはニューヨークで特別捜査班を結成。軍歴をかわれたダシルバとフォックスもいやいやながら参加のはめに。そこで即席ながら対テロ捜査と心構えのレクチャーを受ける。おりしも国連に要人が集まる時期であった。そして追う者と追われる者のドッグ・チェイスが始まる・・。

スタローンが意外に人間臭い「デカ」を演じ、1980年代初頭のおそらく一番荒れた時期の殺伐と寒々しいNYの夜の光景や街の様子・世相も描かれている。彼の作品ではあまり触れられない印象の本作だが、ざらついた感触といい、アクション描写、俳優陣の存在感でなかなかにいい。

ルトガー・ハウアーが、『錆びた黄金』『ブレード・ランナー』で注目される直前に出た作品で、本作で孤立した偏執的・冷酷非情なテロリストをすでに強烈に演じていて魅せる。ロックオンされてからの必死さ、それでも目標達成しようとするしぶとさは見ごたえアリ。

本作はテロリストの心情・本質を描く作品ではなく、実録・ドキュメンタリータッチの作品でもないが、いくつかのテロリストが出てくる近時の空疎な大作とは一線を画する、等身大の登場人物に好感が持てる。孤高の暴走をするウルフガー。大風呂敷を広げず、ハウアーの存在感が立つ。

対テロ捜査にあたり、警察捜査の考え方では負けるというテロ対策のプロ、特殊捜査班のボス、ハートマンのレクチャー場面が存外面白く、後に重要だ。『フェイズ IV/戦慄!昆虫パニック』『ドクター・モローの島』などのナイジェル・ダヴェンポートが、ウルフガーも一目置く長年のライバルらしく、短い出番ながら(個人的にはスタローンを喰う)貫録。最後の一言は痺れる。

工事中の地下鉄現場から走行中の列車へと続くチェイス・シーンもいいが、イースト河のルーズヴェルト島へのロープウェイ(トラムウェイ)をジャックする、昼夜に渡る息詰まるクライマックスの流れもなかなか。直後にも見せ場あり。

エマーソン・レイク&パーマーのキース・エマーソンの音楽も最初こそ少し違和感があっあが、実はマッチしていて本作のアクセントになっている。クセになりそうなメインテーマも格好いい。

カンバータ(犯人側)やリンゼイ・ワグナー(ダシルバの元恋人)などの存在感が薄いといえば薄いが、主人公側に女性がひとりいることの存在感は重要(サミュエル・フラー映画をみよ)。ジョー・スピネルも出ていて、現場刑事の信念・葛藤(拳銃の使用)、生活にも触れ、スタローンだから、派手なドンパチがないからといって敬遠してはもったいない作品。夜のNY描写も忘れがたく、優れている。

映画がビッグ・バジェット体制に移行し、MTVの影響を安易に受けた80年代初頭にありながら、数々の刑事、追跡映画の傑作を生んだ70年代のタッチをおおむね引き継いでいる。当時、二番館で観たが、マックイーンの『ハンター』、レイノルズの『シャーキーズ・マシーン』などと共に、70年代男気アクションという彗星のしっぽを飾る作品のひとつと思う。少し甘めの星5つ。本作と「勝利への脱出」はもっと観なおされてもいい。

NIGHTHAWKS 1981年、99分、米 Universal Pictures、Mono、オリジナルアスペクト比(もちろん劇場上映時比を指す)1:85:1(Spherical)、テクニカラー、モノラル、ネガ、ポジとも35mm
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