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バーバレラのsleepyのレビュー・感想・評価

バーバレラ(1967年製作の映画)
4.2
何を着てもエッチ ****



     映画にストーリーは必要ではない。やっぱり1つでも秀でた映画は後世に残る。こういうのを観ると映画は個性だな、と思わざるを得ない。というか本作には、ソフトコアエロスなフォンダの恍惚と、ビジュアルの個性しかないといいきったほうが伝わりやすい。

いろんな意味で画を眺めているだけで嬉しくなってしまう。ありふれた言い方だけど、キッチュでキュートでイージー。サイケな銀河の彼方でフォンダが次々体験するエクスタシーSF冒険譚だ。そして(メイク)ラヴ&ピースを体現する1作でもある。異星でいろいろいたぶられ、男たちをキュアし、銀河を救うバーバレラは、アリス、あるいはドロシー。つまり本作は回春版(?)「不思議の国のアリス」あるいは「オズの魔法使い」といえなくなくもない。

着せ替え人形のように、バディムの個人的趣味(?)のファブリック感が立ったコス百変化・美脚見せまくりのフォンダは最高。そしてもちろんノー・コスのフォンダも最高。
Opのインパクトで1発で持っていかれて、結局最後までフォンダにドキドキ、クラクラさせられる。衣装のようによく変わる彼女の屈託のない表情の豊かさ。匂い立つ、陽性でポジティヴなえろさ。

さらに美術デザイン、セット、衣装、音楽、特撮いずれもセンス溢れまくりで、唯一無比の個性が全編にわたり堪能できる。資金を潤沢に使ってもこれは再現しにくい。フォルム、色使い、テクスチャア、欧州の人工美、センスの問題。双子、夢でうなされそうな人形の攻撃、迷路世界の住人、魔都ソゴーのデカダン、液体生命体マトモス、湖上都市・・。チープだがどれも憎めない。しかし女帝のドリーム室の造詣は美しくユニークだ。

そしていかにも60年代という、ボブ・クルー、チャールズ・フォックスの音楽、The Glitterhouseの歌もまた、本作の雰囲気のかなりの部分を決めている。役者、エキストラもみな立ってる。

脚本には原作者以外に「イージー・ライダー」「博士の異常な愛情」「ラヴド・ワン」「007カジノ・ロワイヤル」(1967)、「キャンディ」(小説)、「コレクター」(これはノンクレジットらしい)のテリー・サザーンも参加。
撮影は仏の重大な撮影監督の1人、クロード・ルノワール。美術にはノンクレジットで、原作コミックのジャン=クロード・フォレも携わっている模様。

忘れがたい美術・セット・衣装。なのだが、結局、表情のエクスタシー、太ももとヒップ、ときに丸出しのお腹・・、と、まあとにかく髪の毛から衣装から乱れまくりの無邪気なジェーン・フォンダ。フォンダだけで星5つでよい。

★オリジナルデータ:
Barbarella, 1968, 仏=伊, オリジナルアスペクト比(もちろん劇場公開時の画面比のこと) 2.35:1(Panavision (anamorphic)), パラマウント, 98分, カラー (Technicolor), Mono, ネガ、ポジともに35mm
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