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狼男アメリカンのsleepyのレビュー・感想・評価

狼男アメリカン(1981年製作の映画)
4.4
アウトサイダーとリビドー ****



   現代を舞台にアメリカ人、狼男、ロンドンという異質な取り合わせがユニーク。ちょっとスノッブなロンドンというところがミソか(逆にEnglishman in NewYorkなんて歌もあったな。スティングか)。この街といえば恐怖の都。切り裂きジャックはもとよりフリート街の理髪師・・・。原題どおり舞台が英国であることが肝要。

おかしみと哀しみと恐怖(そしてイヤラシさ)が渾然一体、手を変え品を変えやってくるゴキゲンな1本。いささか直截な表現もあるが、過去の狼男映画にリスペクトをしつつも「こんなふうに見せたい!これはだれもやってないぜ」というジョン・ランディスの手作り感あふれるいい意味での学生映画テイストがたまらない。しかし稚拙な部分はまったくない。

いろいろ頭をよぎる本作、一番大きく残るのは望まずしてなってしまったアウトサイダーの疎外感と苦しみ。つまりマジョリティでない者の道連れ探しムービーなのではないかということ。原題(An American Werewolf in London)がまずそれを表す部外者。そして狼男となってしまい人間社会で「怪物」として扱われる。

狼男にやられて亡くなると体は朽ちるが魂は人狼の血筋が絶えるまでさ迷う。生き延びた者は月夜に異常な苦しみをともない「変身」し、無差別に人をおそう人狼となる。つまり、しなない場合に人狼は増えていくということなのだ。無意識ながら「どいつもこいつもこっち側へ来い」ということ。そしてあの世にもこの世にも属さず、永遠の孤独をさまよう。

また、ひねくれた見方だが、本作での人狼への変身と襲撃は、性行為のメタファーなのではないのか。つまり人狼という種族を連綿と残していく生殖行為が襲撃。その間は我を忘れるところとか。昔から男はオオカミなのよ、などという。変身シーンの咆哮はどこかオー〇ズムみたいでセクシャルだ(成人映画館でうめきながら変身するところは笑ってしまった)。

余談だがロック・シンガー、シンガーソングライターのウォーレン・ジヴォンの78年の歌に「ロンドンの狼男 Werewolves Of London」というのがあり、よく聴くお気にいりだった。ピアノのイントロが印象的で。これをてっきり本作のテーマソングだと思っていたが違った・・。
ランディスは69年に元シナリオを書いたらしいが意識していたのか。ジヴォンはユニバーサル映画を意識していたと察するが。ロック界のサム・ペキンパーといわれていたジヴォンのアルバム、また聴きたくなってきた。

リック・ベイカーの仕事の素晴らしさはいわずもがなで触れないが、本作にはおおっ!という名場面がいくつかある。出てくるたびに腐乱していくジャック。夜の誰もいない地下鉄の襲撃シーン。カメラワークが冴えている。成人映画館の全てのくだりは笑えて恐ろしい。そしてそこからなだれ込む阿鼻叫喚のロンドン・ピカデリー・サーカスでのクライマックス。このように歴史のある狼男が暴れるのが現代の大都会の地下鉄や盛り場・映画館という点に新規性があり、ランディスの才気が感じられる。

音楽にもランディスのセンスが光り、「ブルー・ムーン」「バッド・ムーン・ライジング」など月にまつわる懐かしい歌が効果的。彼のsupernatural好きはマイケルのPV「Thriller」へと引き継がれる。

最後にどうしてもいっておきたいのはジェニー・アガターである。あなたはどうしてそんなにお美しくてエロティックなのか。もちろん芝居も素晴らしく、もうずっとお顔を眺めているだけでいい。本作ではリードのうまい憧れのお姉。「荒療治は得意よ」というナース姿の彼女に注目。
オリジナルデータは後日UPします。
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