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魔人ドラキュラのhorahukiのレビュー・感想・評価

魔人ドラキュラ(1931年製作の映画)
3.8
元祖ドラキュラとして名高い名作!
ジョンバダム版『ドラキュラ』をオススメいただいたんですけど、まずは手元にあるこれから♫

元祖と言っても、吸血鬼映画としては世界で16番目に作られた作品のようです(何を吸血鬼と捉えるかにもよりますが…)。なので「正式な」ドラキュラ映画としては元祖だけど吸血鬼映画としては元祖じゃありません。ちなみにムルナウの『吸血鬼ノスフェラトゥ』で9番目。ドライヤーの『吸血鬼』で18番目だそう。ドライヤーの『吸血鬼』の感想に3番目か4番目とか知ったか書いちゃってたので修正しました(^_^;)

あらすじ…
ロンドンの修道院を購入し、トランシルヴァニアの古城から越してきたドラキュラ伯爵。貴族然とした振る舞いで社交界に顔を出し、とある家族に目をつける。相次ぐ不審死事件から、ドラキュラ伯爵=吸血鬼なのではないかと疑うヴァンヘルシング教授と、伯爵に目をつけられた家族が吸血鬼の脅威を消し去ろうと奮闘する話。

冒頭、ドラキュラ伯爵初登場シーンの息を飲むような美しさ。ベラルゴシの端整な顔立ちと当時の最高級衣装に身を包んだ貴族然とした出で立ちが吸血鬼としての圧倒的な存在感と威圧感を生み出します。バカでかいセットを利用した贅沢な空間使いとベラルゴシの貴族としての余裕や威厳を感じさせるようなゆっくりとした挙動が、モノクロ映像と相まって、陶酔してしまうほどの「恐ろしい」雰囲気を醸し出してる。

吸血衝動=性衝動なので、気品溢れるドラキュラ伯爵が抑えきれない情動によって牙を剥き出しにして襲いかかる様子は不気味さの中にもエロさを感じますね。肝心なシーンを極力映さないのも良い。ここは結構叩かれてるとこでもあるんですけど、画面外で行われるからこその、想像させる淫靡さや残虐さがこの作品の上品さの中に巣食う淫靡なムードをさらに高めてるように私は感じました。

解説本や紹介本で、冗漫なゆっくりとした展開やラストの呆気なさが叩かれてるのを時々目にしますが、私的にはそこも好き。同じ原作をもつムルナウの『吸血鬼ノスフェラトゥ』と比較すると両者の違いに色々な発見があって、さらに面白く感じると思います。批評的には完全にムルナウ版に分があるように思いますが、ブラウニングの本作にもしっかり魅力があって、私は甲乙つけられないくらい両方好きです♫
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