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ヴィーガンズ・ハムのhorahukiのレビュー・感想・評価

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)
3.8
超面白かった!ヴィーガンを狩って人肉ハムに加工して大儲けするカニバリズム系ホラー。夫婦が営む経営破綻気味な肉屋をヴィーガン活動家が破壊→ムカついた肉屋夫婦は、腹いせに犯人の1人を轢き殺す→死体をバラバラにして処分しようとしたら間違えて客に売ってしまう→めちゃくちゃ美味いと常連の間で評判になり…の流れ。『悪魔のいけにえ2』とか『ホラー喰っちまったダ!』とかホラー映画の人肉って100パー美味い扱いだよね😂

夫は肉への情熱が強すぎるけど商売下手で超絶ヘタレ。奥様は儲かりゃ良い!なオラオラ系で人殺し&人肉売りをゴリ押すタイプ。躊躇う夫と、殺りまくれ!な奥様というタイプの違う2人の殺る?殺らない?を巡った現実離れしているはずの夫婦喧嘩が割と日常的な夫婦喧嘩のレイヤーで行われるシュールさが堪らなく面白い!

迷惑すぎるヴィーガン活動家への批判&茶化しの楽しさも去ることながら、「私はヴィーガン思想を他人に押し付けません」と豪語する奴がナチュラルに思想を他人に押し付け、その一方で相容れない思想を非人の如く扱ってたりと、かなり攻撃的な作風。「肉を食べた人とキスするのは信条に反する」って恋人に言ってるの笑った🤣

ただ、片面的な主張に留まることはせずに、動物食のターゲットを牛や豚ではなく人間とし、殺される相手方に思いを馳せさせることでその残虐さを実感させる(観客にも主役夫婦にも)という割と思想的に公平なところを着地点にしているのが何かズルい!😂ちなみに私はお肉大好きです!😆

美味い肉を追求するという、プロとしての拘りを徹底することが売り上げには全く繋がらず、逆に紛い物の肉を楽して売る奴らが売上を伸ばす。その仕事上の停滞は結婚生活にも影響を及ぼし、自身のプロとしての在り方にNOを突きつける妻から視線を逸らした先こそが『ヴィーガンズハム』つまり「人肉狩り&売り」に繋がる道なのだけど、妻に対する直視を避けることこそが自身の「プロ」の揺らぎであって、自身がバカにする奴らへと堕ちる入口となる視線演出が的確で好き。車のハンドル操作者の変遷も視線の相剋における敗北を受けた被支配状態への移行として「プロ」を堕とす。夫の葛藤は「プロ」と紛い物で楽して稼ぐ「偽物」との間の葛藤としても機能していて、結構真面目なお仕事ムービーの側面も。
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