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マイマザーズアイズのhorahukiのレビュー・感想・評価

マイマザーズアイズ(2023年製作の映画)
3.3
記録です。

確かにそこまでホラー感はなかったかも。それでも親子感のヒリヒリした関係性と歯止めの効かない加害性・心的同化はホラーと言っても遜色はないレベルだとは思った。チェロ奏者の母子が交通事故に遭い娘が半身不随に。そして母は盲目に。スマホで操作できるコンタクトレンズ型デバイスで母は視力が戻るも、娘はベッドで寝たきりのまま病院の天井しかみられない生活…。動けない娘のために、母はデバイスを通じて娘と視界を共有することを思いつくが…。

発想がボリスカーロフ主演の『Sorcerers』とかなり近い。老人ホームから出られない高齢者たちのために感覚同化デバイスで若者の感覚を体験させた『Sorcerers』に対して、感覚器官側である母から望んで娘に同化していく…というのが面白かった。

出産時の目のクローズアップと涙が、微妙な表情の変遷と共にアンビバレントな感情を想起させるファーストカットからして既に不穏だし、あまりのカメラの近さゆえに顔の上下が逆転しているようにも思えてきてそれがまた不安感を高めていたように思った。鏡像を上下逆に写した次カットへの引き継ぎ方も含めてアイデンティティなり深層コミュニケーションなりの混濁感をとにかく盛り盛りに盛ってきてる。

交通事故という「死」を挟む前までは明らかにリビドーと芸術性(音楽)、そして女性としての自己、他者コントロール願望をリンクさせた「個」の人格を子よりも優先しているのがわかるし、娘の話題、娘との会話で耳鳴りが起こり、極め付けは「私を見て」と娘に懇願されたタイミングで視力が終了するという心的反応として感覚器官が連動する。交通事故後に自身のチェロが帰ってこなかった点においても先のリンクされたもの全てをそこに一緒に置いてきたのであろうし、主観として互いに共有していた深層感情が第三者に対して母の口を通じて娘に語らせることで客観的な事実として確認され、従属関係の天秤の先に文字通りの再誕によって娘を「正気じゃできない」母という立場のもとに追認する真っ当な展開に思えて好き。

他の作品を知らないからわからないけれど、関係性と同様に硬質的な画面はアングルと距離によって恐らく緻密に練られているのだろうけれど、私にはあまり面白みを感じなかったし、ちょっと頭でっかち感があってイマイチに感じた。邦画ホラーで山奥の別荘的な空間に行く時って何で洋館的な雰囲気のところになるんだろうね。セリフ等々よりも映像や音で伝えること重視…みたいなことパンフに書いてたけど、「え?そこわざわざ言葉にするの?」みたいな箇所が何箇所もあって、すんごい歪に感じてノイズだった。クローネンバーグとか『ポゼッサー』とか挙がってたけど、『ゲットアウト』からも超影響受けてそう。


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