horahuki

The Town That Dreaded Sundown(原題)のhorahukiのレビュー・感想・評価

3.6
記録です。

1946年に実際に起きた未解決事件であるテクサーカナ月光殺人事件を基にしたスラッシャー。ズタ袋を被った殺人鬼“ファントムキラー”が住民たちをkillしていくのだけど、半年くらいの期間で行われた数件の殺人を、捜査機関目線でナレーションを絡めた擬似ドキュメンタリー的に描いていて、通常のスラッシャーとは全く違う感触の作品。被害者も全員死ぬのではなく生き残る者たちも普通にいるし、そもそも事件かどうかもわからない事象に振り回される保安官を追うのが作為性の高い再現映像を見ているかのよう。戦後、平和だった街で突如カップルを狙った殺人事件が頻発→銃や鍵がバカ売れ→誰もが次は自分か自分に近い人が犠牲になるのだろうと漠然と考え恐怖が街中を支配。その殺人が決まって夜に起こるためにこのタイトルとなっているみたい。

『見えない恐怖』とかみたいな犯人の足元のみのトラッキングから始まり、未解決故の余白に楽しげ人々を振り返る等々の犯人の人物像が肉付けされていく。男を車から放り出して悲鳴を上げる女の車内に侵入→揺れ動く車を捉えつつのOP入りのセンスも去ることながら、それでいてレイプはされていないという逆な異様さが木にしがみつくような女の死体を経てトロンボーンピストンへと受け継がれる段階を踏んだ性的倒錯の開示が面白い。というかトロンボーンの先にナイフつけてそれで女の背中を何度も刺して悶絶してる犯人さんイカレ過ぎてて素晴らしい!🤣

殺人を含めて死体を一切誇張せず日常の延長線的な風景に埋没させるかのような捉え方やカメラの入りを、先に書いたような日常側の格上げによって地続きとしてしまうのが効果的で、中でも一瞬のロングショットを挟んだ死体への接近とかかなり好き。大仰な曲を散らばせつつも虫の鳴き声や雨の音といった自然音を主とする姿勢がその辺りの隣り合わせな感覚を増長しているし、死を誇張するスラッシャーとは完全に一線を画している。タイトル通り本作の主役は格上げされた街そのものだとの強い意志を感じる。未解決とはいえクライマックスの見どころとなる列車挟んでの発砲とかカッコイイし、社会的恐怖に乗じた犯罪や混乱とか真面目に周辺事情を採り入れつつバカすぎるコメディ要素まで加えているのがヘンテコ感あって好き。それでいて時々入るエスタブリッシングな引きの動的な群衆とか地味にカッコイイし。ほんとヘンテコ。これがクリスマスホラーってどっかで見た気がしたんだけど、1976年12月24日に公開されたっぽくてそれを私が勝手に勘違いしてたっぽい…😭

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