うっかり「世界を救うために未来からやってきた」なんてことを言うと、精神科の閉鎖病棟に措置入院させられてしまう映画のパターンがあります。そんな正直なこと言わずに、もっとうまく任務を遂行すればいいのにって思いますが、それでは物語として面白くありません。
この作品は、未来人が精神患者とみなされるところに着目して、精神科医との交流から過去の謎解きにつなげる展開が秀逸です。そこにタイトルの“12モンキーズ”の不気味な存在が相乗効果となって、物語の緊張感を終盤まで維持させています。
未来人が“やっぱり妄想かも”って失速していく一方で、精神科医が“まさか本当だったとは”って真剣になっていく対照的なところも面白く、そのきっかけになるエピソード(井戸の少年、過去の弾丸、留守電のメッセージなど)もいいです。そうした展開には、未来のかなり不安定(ポンコツ)なタイムマシーンの存在や、胡散臭い科学者たちの言動も原因になっています。
そのように緻密な脚本は、もっと評価されていいと思いますが、テリー・ギリアム監督の作品にしてはソフトで無難な演出とか、独特な未来の風景を創作しようとしたのに意外とチープだったりとか…さまざまな要素がマイナスになっているのかもしれません。
ブルース・ウィリスは「パルプ・フィクション」が評価され、ブラッド・ピットは「セブン」の直後で、かなり勢いのあるころの作品でした。その2人とともに存在感を発揮しているマデリン・ストウは、序盤から終盤にかけての変容ぶりが印象的です。
エンドロールで使用されるLouis Armstrongの“What a Wonderful World”は反則のような気がしますが、不穏なメインテーマに対比させた穏やかな余韻が効果的です。