櫻

男と女の櫻のレビュー・感想・評価

男と女(1966年製作の映画)
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直視してあまりの変わりように心が慣れてしまわぬよう、ここに粉砂糖のような雪をまぶす。氷の粒はきらきらと反射して、あたりをぼやけさせてしまう。今見てるのは記憶の断片なのか、流れついてしまった現実か。手を離してしまった過去は、いつのまにか夢のように実在感があやふやになるのに、ふとはっきりとした輪郭と色彩を伴ってやってくる。過去は現在のスピードには勝てず、現在は過去の思い出の全てに帽子を取ってひれ伏す。大切なあの日々を忘れてしまうことなんてたぶんできない。同じ色を同系色を重ねて消そうとしても、なんだか浮き出てきてしまうみたいに。それでもきっとその二層になった日々さえ、愛おしむ今日をいつかは生きるのだろう。だから思い詰めた今だって手放さないでいいのかもしれない。
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