櫻

ハッピー・オールド・イヤーの櫻のレビュー・感想・評価

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大切だと拾い上げたそれも、いつのまにか必要ではない何かにされて切り捨てられていく。必要と不必要の残酷な線引きによってどんどん無駄はなくなるけれど、ものにのせられた記憶や思いにも鈍感になって忘れてしまうかなしみが描かれていた。ものを捨てていってシンプルにきれいにすることは、なんだか自分がまっさらなゼロの状態に戻ったかのように思えてしまうけれど、おおきな時間のなかでは地続きで実はなにも切り離されていない。今までもこれからもずっとわたしはわたしでしかなく、薄情で鈍感な部分と向き合うことでしか、ほんとうには前に進めない。それをやっとわかって涙の一滴にできた彼女と自分を重ね合わせた。わたしはこれからどんなわたしになることもできるけど、過去のわたしがどんなものや人と別れてきたのかちゃんと覚えていられるだろうか。
櫻