マヒロ

ロゼッタのマヒロのレビュー・感想・評価

ロゼッタ(1999年製作の映画)
3.5
酒と男に溺れるダメな母とトレーラーハウスで二人暮らしをするロゼッタは、母の世話に加え不当な理由で仕事をクビになるなど苦労が絶えなかった。そんな中、たまたま出会った青年・リケに誘われてワッフルスタンドの仕事を始めるが……というお話。

子供の苦悩を描いた作品が得意(?)
なダルデンヌ兄弟だが、今まで観た中でも辛さは段違いだった。ロゼッタは過酷な環境で暮らす中で「普通の暮らし」をすることに固執しており、普通に働いてお金を貰いたいのだが、大人達の勝手な都合で仕事を取り上げられてしまい働くことすらままならない。家に帰れば母は道端で酔いつぶれていたり近所の男とよろしくやっていたりとロクでもない状況で、どこにも逃げ場がないという八方塞がりな環境が出来上がってしまっている。

『イゴールの約束』では親の支配から逃れて成長していく少年を描いていたが、今作では逃れようとしてもとことん上手くいかずに脚を取られてもがき続ける様を淡々と切り取ったかのような作品で、かなり冷徹だがこちらの方がより現実的なんだろうなとも思える。
常にロゼッタに映し続けるカメラは、周囲の状況すら分からないような密着度で彼女の表情や振る舞いを見つめていて、彼女の感情に合わせるように時には乱暴に揺れ動いたりしながらも離れることを止めず、観客の眼前にその状況を突きつけてくるかのような印象があった。
他の人間なんて誰も信じないとでも言うかのようなロゼッタの確固たる意思が滲み出た表情が凄まじいが、ワッフル屋でにこやかに働く場面や、ある決断をした末のラストシーンなど、そんな表情がふと緩むところに彼女が必死で隠そうとする子供らしさが見え隠れして、また辛くなる。
決して映画的に飾り立てることの無いストイックさもありつつ、真に迫った臨場感でこちらを捉えて離さないような魅力もあり、流石のバランス感覚だなと思った。

(2021.144)
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