きよぼん

独裁者のきよぼんのレビュー・感想・評価

独裁者(1940年製作の映画)
4.8
正論っていうのは意外と心に響かないことがあります。

言葉を理解することと、言葉が心に届いて人を動かす力になることは別の話。この作品はその人を動かす力を持っている映画です。

伝説のラスト6分の演説シーン。あの言葉に心震えるのは、映画全編で描かれる独裁権力の馬鹿馬鹿しさ、市民の生活などを、「笑い」という表現に包み込み共感を誘うからなのでしょう。

メッセージが伝わるかどうかっていうのは、正論であるかどうかというのもありますが、誰が、どのように伝えるかで人を動かす力になるかが決まる。映画っていうのは人の心に響く力を持っている素晴らしい表現であることを再認識させてくれる本作。。もちろんそれを実現したチャップリンの才能にも敬服。

映画の前半、ユダヤ人襲撃前の平和なとき、

「いつまで続くかわかるものか」と、老人はつぶやきます。

「問答無用の名作」と何度も何度も聞き飽きたような評価のされている本作。しかし、作品の評価なんて時代によって変わってしまうもの。いつまた世の人の考え方が変わり、この作品への評価が変わるときがこないとも限りません。

70年以上前の作品ですが、過去の風刺だけでなく、現代、そして未来にも通じるメッセージを持った本作。また世の中がトンデモない時代に突入せぬよう、この作品がいつまでも「名作」という評価を受けることを願いたいです。
きよぼん

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