記録

フロリダ州で４人の子供を持つ黒人の母親が、白人の隣人との口論の末、閉じたドア越しに銃撃され死亡した事件。

本作の最大の特徴が、ほぼボディカメラ・監視映像・通報音声という“素材そのまま”を映像言語として用いていること。
起きたことすべてが現実であり、見ていて胸が苦しくなった。

調べたかぎりの事実関係を整理すると、

・加害者の白人女性がたびたびクレームをつけている隣接した芝生の広場は彼女が所有する敷地ではない。借りてもいない。

・子供たちが広場に置き忘れた物を加害者はしばしば勝手に回収していた（これがのちのトラブルにつながっている）

普通の感覚で言うなら、もし隣近所にiPadやローラスケートが落ちていたなら、手をつけないで放っておくだろう。

加害者は「勝手に人の敷地に物を置いていく」と言っている。
つまり彼女は借家に住みながら、隣の芝生の広場も『自分のものだ』と思いこんでいる節がある。

事件前、親の一人が「彼女は統合失調症なんじゃないか」と不安がっていたが、そう疑ってしまうのもわかる気がした。スーザンはあまりにも思い込みが激しく、攻撃的で、排他的だ。

隣人間の小さな衝突が、背景にある人種的な偏見・恐怖が、銃社会構造によって“致死的”な暴力へと肥大化している。

フロリダ州のいわゆる“スタンド・ユア・グラウンド（Stand Your Ground）”法が弁護論点として浮上するが、加害者はあらかじめそれを調べていた形跡がある。
※スタンド・ユア・グラウンド法を正当防衛と翻訳するのはだいぶ無理があるかもしれない。正しくは、逃げる義務なしに攻撃者に武力行使していいという州法。

この事件の本質は、異常な人間がいたからというより、異常を即死に変える“環境”が整っていたという点にあるだろう。
つまり、「銃社会の制度」が“怒りや恐怖をすぐに実行できる装置”として、日常の中に常設されていた。
そして本作は、その恐ろしさを声高に語らず、日常の延長として描くことで逆に暴力の異常性を際立たせている。

トラブルそのものは、どこにでもある。
隣人が子どもの声に苛立ち、玄関口で言い争う。
ただ、そこに「銃」がある社会では、それが“終わり”に繫がってしまう。

一体どうしたらよかったのか。
やんちゃで予測不能な子どもを完全にはコントロール出来ない。
隣人の過敏さは病的で、攻撃性もある。
その差別的な言葉に抗うのは当然でもある。
けど、ヒートアップさせたらいけない。
難しすぎる。

殆ど警官のボデイカメラの映像で綴られる本作、そんな映像よく使わせてくれるなあと思うけど、開示や使用の自由みたいなのがあるのかな。

↓↓ネタバレ






ほ、保釈？？？
人を撃ったのに家に帰すの？？？
隣人が黒人で撃たれたのが白人だったら絶対違うよね……。

何よりも拳銃が怖い。
恐怖に取り憑かれた人が拳銃を持っていたらそりゃ発砲するよね……。
日本が銃規制の厳しい国で良かったよ、そうでなくても刃物で事件が起こるのに。