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アメリカン・マーダー: 一家殺害事件の実録

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アメリカン・マーダー: 一家殺害事件の実録

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『アメリカン・マーダー: 一家殺害事件の実録』に投稿された感想・評価

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悲しく、恐ろしい事件のドキュメンタリー

作風を一言で表すと、
「ドキュメンタリー版: search」

突如行方不明になった1人の女性と、2人の娘
誘拐か?それとも家出?
とにかくどうか無事で…観る人みんながそう思わずにはいられない

そして、ラストには衝撃の真実

犯人が犯したのは、償い切れないほどの重い罪
それでも「あなたを許します」と言った被害者の親族と友人はどんな心境だったのか
複雑だったに違いないけれど、尊敬に値する

「search」のように、映像がSNSやTV、防犯カメラや当時の記録映像で成り立っているところが斬新で、リアルさが増していて、ドキュメンタリー作品として、完成度が高い


エンドロールのテロップには、アメリカの犯罪の現状が流れる
「アメリカでは今でも……」
これには絶望と悲しみが溢れる
知るべき現実は、世の中にはたくさんあるんだと考えさせられる
3.5
 ネットフリックスで公開されている映画を片っ端から観ているが、これはなかなか考えさせられる凄まじいドキュメンタリーだった。不謹慎な言い方で申し訳ないが、4人家族の物語で、母親、長女、次女が既に亡くなっているにも関わらず、様々な映像記録を付けたり足したりしながら、こうして1つの映画が誕生したという事実に驚嘆する。SNSは云うまでもなく大変便利で率直なメディアだし、その光の部分はデヴィッド・フィンチャーの『ソーシャル・ネットワーク』などを観ればある程度は理解出来るが、それが下々に浸透した時点でフェイスブックに挙げた情報はマス・メディアにとって好奇の目で見られる格好の素材ともなり得る。面倒だが我々は日々それを自覚し、情報を発信せねばならない。我々がSNSで1日に浴びる情報は一説によれば戦国時代の農民の一生分とも言われている。その中には有益な情報もあるだろうが、明らかに肥大化した自己顕示欲を満たすためのものも多い。日々浴び続ける他者の情報に疲れたり、誰かと比べて自分を卑下したりしてしまう人の何と多いことか。被害者となった母親はこのフェイスブックの「熱烈」な投稿者だった。専業主婦で34歳の母親は愛する夫を石油会社に送り出すと、2人の娘の育児に奔走していた。彼女のお腹の中には更にもう1人の命が宿っていた。彼女のアイデンティティは2人の娘で、彼女たちの日々の姿を顔出しで時に映像付きでSNSで発信した。

 誰が母親、長女、次女を殺したのかだが実話である以上、ミス・リードを起こすような重要参考人や怪しい人物はまったく出て来ない。当初出て来た人物が予想通り事件の犯人なのだが、そこに映画のカタルシスもない。ではなぜ死んだ人の名誉を傷つけるようなこんな映画がまかり通ったのかと言えば、そこには非常に複雑で現代的な事情があった。被害者がSNSで発信していた情報は自己顕示欲の発散でしかない。彼女の名前を検索し、他人の家庭をつぶさに見た野次馬たちは彼女の派手な生活やあけすけな言動を受け取り、夫へ同情の思いを強くする。第三者にとってSNSに残っている情報だけが家族の全てであり、被害者よりも加害者に肩入れした偏った論調が増え、残された母親の親族は誹謗中傷に苦しめられた。SNSで繰り広げられる誹謗中傷合戦には「真実」などなく、終わりも見えない。こうしてSNSで繰り広げられるイメージに対抗すべき映像の証拠として今作は作られた。アメリカはいま、トランプ以後の「分断」の時代が続いている。マス・メディアから垂れ流される情報への不信に加え、BLMの警察不信が被害者遺族を苦しめる。あらゆる写真や映像、テキストはSNSにより可視化され、警察官のボディ・カメラや取調室の防犯カメラ映像もHD画質で垂れ流される。そこで何を取捨選択するかに我々個々人のリテラシーは試されている。
幽斎
4.2
妊娠中の妻と二人の幼い娘が突然失踪、夫は「家族が消えた」メディアに涙を流して訴えるが、歪んだ家族の崩壊が浮上する、ドキュメンタリー。Netflix作品。

いつも思うけどNetflixって、映画よりドキュメンタリーの方がセンス良くない?(笑)。本作はアメリカでも一味違うドキュメンタリーで知られる、Knickerbockerglory-TV製作。出演者は全てSelf、当事者の語りで構成。改めて事件を振り返ろう。2018年8月コロラド州フレデリックで、夫が家族が消えたと訴えた事から始まる。

特徴は、通常の専門家インタビュー型ではなく、スマホ動画、SNS投稿、警察ボディカメラ、実際のテキストメッセージだけで物語を構成。夫の訴えは警察の捜査が進むにつれ、家庭内に潜んだ崩壊が浮かび上がる。私の専門はミステリーですが、「犯人は誰か」追うミステリーではなく、「なぜ普通に見えた家庭が崩壊したのか」、静かに解剖。演出ではなく現実。テンプレの再現ドラマすら有りません。

映るのは、実際のFacebookライブ、家族動画、友人とのLINE的メッセージ、防犯カメラ、警察のボディカメラ、取り調べ映像だけ。つまり、観客は「編集されたドラマ」ではなく、事件当時のリアルタイムを疑似体験。秀逸なのは最初に警察が家を訪れた場面、ホラー映画並みの不穏さ。空気の冷徹さが、最大の見所。

プロットはSNS時代の「理想の家族」崩壊。シャナンはSNSに積極的、画面の中では、幸せな夫婦、理想的な子育て、郊外の中流家庭、明るいホームビデオが延々と続く。しかし、裏では経済不安、夫婦関係の冷却、不倫、感情の断絶が進行。「SNS上の幸福」が如何に幻想で脆い「嘘」で有るかを容赦なく叩きつける。

レトリックはクリスと言う「空虚」な存在。典型的なサイコパス映画の悪役には見えない。無口、衝突回避型、平凡、温厚そう、何処にでも居そうな父親。「怪物」が事件を起こしたのではなく、人間の内部に「空洞」が有った事を証明。

警察の取り調べの彼の態度は、感情の遅れ、他人事のような話し方、状況演技の浅さも露呈。つまり、視聴者は途中から事件よりも「この男には何が欠けてるのか」観察する感覚に堕ちる。個性派のスタジオなので、編集の巧妙さ。時系列編集が長編映画並みに上手い。「失踪事件」として見始める。しかし、正しい「答え」へ追い込まれて逝く。尋問シーンは、下手な映画以上に緊迫感も有った。

被害者家族寄りの編集、事件背景の省略、SNS依存や家庭問題の掘り下げ不足、センセーショナル過ぎる構成。私から見ても、ミステリーの様な完全なケース分析でもない。シャナン本人の私的メッセージまで使われ、「覗き見的で苦しい」視点。ドキュメンタリーと言うよりも、「現代家庭崩壊のリアルタイム記録」として見るべき。事件の遠因はシャナンの浪費癖、女性だけの特徴的なSNS映えを意識し過ぎ。

アメリカには「American Murder」と言うジャンルが有る。当たり前だろ、アメリカの殺人事件なんだから、ではない。ショーケースとして描くのは、郊外住宅、SNS幸福競争、消費文化、理想の家族像、中流神話、自己演出と言う、「現代アメリカ的多幸感」そのものの崩壊。「理想家庭と言う幻想の崩壊」、全ては虚像だった。

犯人探しではなく、「なぜ人は壊れる直前まで普通を演じられるのか」。血深泥の描写こそ少ないのに、観終わった後の精神的ダメージは重い。真の怖さは殺害シーンではなく、日常会話、家族動画、微妙な沈黙、作り笑い、SNS投稿の中に、破滅の兆候が見えたと気づく瞬間。「幸福の仮面が崩れる瞬間を記録した映像」。

事件前から複数の問題が重なる。①「経済不安」家計はかなり圧迫されてた。②「シャナンの関係性」彼女は家族を維持しようとする側。③「不倫に依る別人格化」家族が守る対象ではなく、新しい人生の障害。④「SNSと理想の圧力」現実が壊れてるのに理想だけ継続。⑤「クリスの心理的崩壊」狂人と言うより、感情処理能力が極端に未熟な人間。最後の⑥感情が切断された人間が正常を演じ続けた。

レビュー済「search/#サーチ2」画面だけで進行するスリラー。レビュー済「ゴーン・ガール」理想夫婦の崩壊と言うミステリーに良く似てる。恐ろしいのは、事件直前まで普通の幸せに見えていた。シャナンの浪費癖でクリスは疲弊して若い女に走る。シャナンの「かまってちゃん」がクリスを追い込んだ。クリスも被害者じゃないか?的な論調、擁護派も根強い。だから今でも、「現代社会そのものの闇」として語られ続ける。さて、貴方の隣の家は大丈夫ですか。いや、貴方自身かも?。

理想の家族を演じ続けた日常の裏に潜む崩壊と空虚、心理系ドキュメンタリー。

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