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マイレージ、マイライフの東京キネマのレビュー・感想・評価

マイレージ、マイライフ(2009年製作の映画)
4.2
トップ・クレジットが結構洒落ていて、導入部からドラマに一気に引き込まれます。

ジョージ・クルーニーの映画って、なんか今一感というか、キャラクターに馴染んでない役が多いんですが、この映画はもうピッタリはまっていて、まるで彼のために作ったような映画です。恐らく、これ原作がいいんでしょうね。今や世界中が不況の真っただ中だし、こういった内容は仕事をしてる人だったら色々感じるものはありますしね。

先ず設定が面白いです。この主人公はリストラ会社の首切り人。つまりデストロイヤー(破壊者)なのです。彼は何も作ってないし、何も生産していない。彼が忙しく仕事をすればするほどGDPが減っていくっていう不思議な仕事。それに1年間に322日も出張しているので、生活の中に生活感がない。ましてや独身主義者だから家庭もない。つまり「生きてる」実体もないのです。これだけ出張が多ければ、いわゆる「わたしはだれ? ここはどこ?」っていう状態なので、マーキングすることになる。それがマイレージだったり、カードだったり、ステータス自慢になったりするんですね。

※以下、ネタバレを含みます。








そんな主人公がある時、二人の女性に出会う。一人は優秀な新入り女性社員、そしてもう一人は後腐れのない大人の関係になれる女。新人の女性社員の方は、ある画期的なアイデアを会社に持ち込んでくるのですが、このことで長年続けていた主人公の仕事がなくなるかも知れない状況を作ってしまいます。またもう一人の女性は、最初は同じ出張族という仲間意識の軽いノリだったのですが、だんだん深入りして恋愛感情を持ってしまう。ある時、約束を破って女性の私生活を覗いてしまうのです。見てはいけない彼女の実体を知って、一歩踏み出そうとしていた主人公は間違った判断をしてしまったことに気付くのです。つまり、二人の女性との出会いによって、主人公は仕事と私生活両面においてデストロイされてしまう。人間関係には深入りしないってのが主人公の長年の信条だった訳ですが、ライフスタイルそのものが崩壊してしまう訳です。

こうやって書くとペシミスティックな話ですが、そうじゃなくて、精神的には瓢箪からコマの逆転人生になっているところがこの映画の面白さです。要するに、デストロイされたことで主人公は覚醒するんですね。

この映画、なんかラブストーリーのようでもあり、ブラックコメディのようでもあるのですが、あんまりそういった類型化した映画のスタイルじゃありません。リアリティーがありそうでない。というより、色々な事件がシンボルになっている感じです。いわゆる「Change your point of view」ってことなんですが、やっぱり人間関係ってバーチャルの世界じゃだめよ、リアルの場でしっかり生活を築きましょう、って当たり前の話っちゃ当たり前の話なんですけど、そういった映画のニュアンスが非常に良く出来ているので深く入ってきます。


色々考えるきっかけが出来て、なかなか良い映画でした。自分の人生も、生活の中でちっとばかしの楽しみも大切にしなきゃなあ、って思うのも映画の一つの効用。これって結構大事だよね。