新潟の映画野郎らりほう

インベージョンの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

インベージョン(2007年製作の映画)
3.0
【一律思考のユートピア】


テーマは【全体主義の恐怖と 一律思考のユートピアへの懐疑】だろうか。


冒頭僅か30秒程で、世界の異質化とキッドマンの置かれた状況の異常さ そして状況打破のルール説明を行っているのは巧い。 速効把握出来 作品世界に入る事が出来た。 演出面では ネクストシークエンスを先取りし 現シークエンスに錯時挿入する事で[迷妄]を生み、キッドマンの疲労を表していたのが良かった。

感染や終末的都市描写、脱個性化してゆく集団等 これもゾンビ映画の羅列に加えてもいいだろう。 ただ、ゾンビでは直截的な生命の危機に晒されるのに対し 本作では精神的な危機、アイデンティティーに迫るゾンビ映画といったところか。
寒色めいた映像やエレベータ-前に押し寄せる集団等 共通項も多々垣間見られた。


一番の不満は[間]が決定的に不足している事。
作品は全体的にスピーディーで次々展開し 総尺も長くは無い。 「観客を飽きさせずにテンポ良く」を志向したのは理解出来るのだが 先述した通り[直接の恐怖]では無く[精神の恐怖]を扱うのならば 人物心象に迫る[間]は不可欠だ。
本作は精神恐怖を匂わせつつも アクションに打って出る【題材を演出が裏切る】作りが残念だ。 製作サイドは『考え感じさせる作りではなく 単純明快な解り易さ』を選択した様だ。




《劇場観賞》