カツマ

愛の勝利を ムッソリーニを愛した女のカツマのレビュー・感想・評価

4.0
ムッソリーニの最初の妻だったと言われる女性イーダ・ダルセルの人生を、第一次世界対戦時の映像と狂乱をも一緒くたにして描き切った、マルコ・ベロッキオ渾身の作。
激情を通り越した炎のような愛。彼女の愛は尽きることはなく、常軌を逸した精神は燃え盛る。

イーダの人生はムッソリーニと出会ったことで180度変わっていく。彼のために全てを捧げ息子を宿すも、やがて彼女の愛は暴走し精神は壊れていく。劇中では結婚証明書が存在している設定だが、実際にはまだ見つかっておらず、彼女が最近まで隠蔽されていた事実と照らし合わせても、イーダ・ダルセルという存在は相当にアンタッチャブルなものだったと思われる。

マルコ・ベロッキオはイーダを闇の中に住まわせ、彼女の悲劇的な人生をドラマチックに描いている。雪と牢獄のシーン、車中の横顔、そして映画館で蠢く白黒の人物達とそこに浮かび上がる美しい瞳。壮大な物語にして、転がるように戦争へと突き進む当時のイタリアの情勢をまともに焼き付けることに成功。恐ろしく見応えのある壮大な物語がここには詰まっている。
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