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オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドンのlololoのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

言わずと知れたアンドリュー・ロイド・ウェーバーの名作。劇団四季版を鑑賞済み且つ、以前、本作の続編『ラブネバーダイ』も鑑賞したので、今回のYouTubeでの期間限定公開を楽しみにしていた。

しかしまあ、この演目をアルバートホールでだなんて、なんでお誂え向きな…!と、ドキドキした。劇中劇が多いから、なんだか観客まで舞台演出の一部みたいで。

暗く静かなオークションの場面から一転、お馴染みのあのメロディがぎゅいんぎゅいんと鳴って強引に世界観に引き込まれる。あの時すでに、怪人にがっしり腕を掴まれているんだって、気づけばよかったんだ…。
怪人の音楽は重たく激しいくせに、歪んだギターみたいな所謂電子音も含んでいて、本当にずるいなと思った。手段を選ばず引き込もうとしてくるあの感じは恐ろしい。

初めてこの作品を見た時、怪人とクリスティーヌの関係って擬似的な父と娘だなぁなんて思ったけど、それ以上に、もっと拗れてて依存してて、それでいてえらく深いものなんだなぁ…と感じた。
首を吊るされたラウルの前で、「あなたが一人じゃないと示す勇気を神様がくれた」って言った直後、クリスティーヌが熱烈なキスをした瞬間は号泣してしまった。(あの場面で怪人が目を開けたまま、なすがままキスを受け入れてるのがもう辛い)誰に感情移入しての号泣かわからないまんまボロボロ泣き、ボロボロになった怪人を見て一緒に泣き、クリスティーヌが指輪返しにきたのを見て一緒に泣き…。
この物語は、(自分のいる環境と全く違っても)誰かしらに想いを寄せる事ができるから、長い間愛されているのかもしれないとしみじみ思った。

劇中、一番最後にメグが怪人の仮面を見つける場面。彼女と怪人の接点って本作だと出てこないけど、このたった数秒の描写だけで、「メグが怪人の居場所を知ってたこと」や「メグが彼を気にかけていたこと」がわかって、胸が苦しくなる。そう思えたのは、『ラブネバーダイ』を見てたからだろう。あっちだと、メグが怪人に認めてもらいたくて仕方ない感がわかりやすいので…。

なにぶん、『ラブネバーダイ』の記憶があるので、ラウルとクリスティーヌのイチャイチャ告白タイムみたいな場面で、どうしても、「とかなんとか言ってるくせにこの男、10年後にギャンブルに身をやつして落ちぶれるんですけどね…」っていう気持ちになってしまった。(夜の屋根の上、とても素敵なシーンではある)

そして、最後の最後まで見逃さない。カーテンコールは、演劇の醍醐味。それにしたって豪華だ。
まず、舞台上で怪人とクリスティーヌの2人が揃った時、怪人がスッとクリスティーヌの掌にキスする姿とか「ヒェッ…」となった。
何はなくとも、怪人を最大5人従えて歌い上げるサラ・ブライトマン。オーラがとんでもない。怪人たちから「歌え!」って言われるのを軽くいなしながら歌い上げるサラ。あのクリスティーヌは多分、怪人とラウルの両人を小脇に抱えて走って、2人まとめて幸せにできる。

エンドロールが流れる中、ステージに残った怪人を後ろからぴょんっと抱きしめるクリスティーヌ、それを受け入れて彼女を横抱きにして暗闇に消える怪人の背中。最後まで怪人は、美しい怪人として消えるのだな…と感動した。
カーテンコールはもう、ゆっくりと役柄から俳優へとシフトしていく時間帯だというのに、「結局彼は怪人で、彼女はクリスティーヌだった」という感じがして。ありがとう…。
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