新潟の映画野郎らりほう

ルパン三世 カリオストロの城の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

4.3
【…に落ちて…】


執拗に繰り返される垂直降下。断崖で、城塞から、そして時計塔で。
それら落下表現過多に伴い その対となる高所登攀描写も当然 多岐多彩であるが、本来的に意思的行動であり主目的な筈の“登攀”より、寧ろ“落下”こそに 意思/主目的性を感ずる。つまり『落ちる為に登っている』のである。

その事を看取させるのが『少女の眼前でルパンが落穴に転落する場面』である。少女の絶叫と共に落下し 二人の物理的距離が“引き離される”その瞬間のルパンの確信めいた表情……。もう間違いないだろう。

追い越し、追い掛ける - 二人はその距離を縮めようと垂直構造で。

ラストの少女の落下は、それまでのルパンの落下への“呼応”に思えて-。


遂に 二人が、一緒の速度で共に“落ちてゆく”様に感動を禁じ得ない。
その落下が何を表徴するものかは、銭形警部の 終いの一言を待つまでも無いだろう。


無数の“落下傘”は その降下速度を緩やかに いつまでも消えぬ想いを表象する。




《DVD観賞》