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戦争のはらわたのLATESHOWのレビュー・感想・評価

戦争のはらわた(1977年製作の映画)
4.3
戦争を美化したがる輩には
鉄十字勲章を投げつけてやれ。

サム・ペキンパーの映画に
神話なんて何処にもない。
伝説、英雄、美徳、名誉。一切ない。
あるのは、
時代と、社会と、現代の価値観に
いつしか取り残され
やがて滅びゆく
草臥れた荒くれ男たちの
壮絶な死に様。
戦時中の銃撃戦で仲間達が
すぐ目の前で死んだ瞬間、
時間がゆっくり流れるようだったからと
スローモーションで殺戮を撮るペキンパー。
怒りがスローモーションに込められている。
かすかな詩情を交えながら
彼は世界の無慈悲さを
高い純度を保ったままに撮る。
勲章一つのために
味方同士で殺し合う悲惨な戦場。
絶え間無い爆音、降り注ぐ血肉。
吹っ飛ばされ鉄条網にぶらさがる兵士。
泥の轍に踏み潰されたままの死体。
獣のように飛び掛かり深々と突き刺さる銃剣。
凌辱しようとする兵士(元ゲシュタポ)を嬲り殺す女達。
安全な場所でのうのうと生き
負傷兵を再び死地に送るナチ高官ども。
誰一人として戦場では総統の説く
大義なんぞ信じちゃいない。
ジェームズ・コバーンは
戦場に心を置き忘れてきてしまった。
味方の陣地も、病院のベッドも
彼に帰る場所はもうどこにもない。
この世界は理不尽であり、残酷であり、
ジェームズ・コバーンが劇中呟くように
神は救い難いほどにサディストだ。
だがそれでも、
ペキンパーの映画に登場する荒くれ達は
無茶苦茶な世界で楽に生きようとせず
己の絶対に譲れないことの為だけに
なけなしの命を放り出し、
乾いた風吹く死に場所を求め散っていく。
ヒロイズムとは程遠い破滅の美学を伴って。

おまえの絶対に譲れないものは何だ?
ペキンパーはいつも俺に語りかけてくる。
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