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女鹿のRのレビュー・感想・評価

女鹿(1968年製作の映画)
4.2
ボクが深く偏愛しているクロードシャブロル監督のフィルモグラフィの中でもかなり独特な一本。いや、まぁどれもそれぞれに独特やな。冒頭、いかにも金もってそうな無愛想な年増の美女フレデリークが、アンニュイなムードで橋の上に立って、橋に女鹿の絵を描いて小銭を稼いでる若い女を見つめている。その女は名をホワイ(Why)と言い、フレデリークは彼女を拾って自分のホテルへ連れて帰る。どうやらフレデリークはレズビアンであるらしい。ホワイはそのまま南仏のサントロペにあるフレデリークのおうちに連れられて、そこで謎にテンションの高いゲイカップルと奇妙な4人暮らしを始める。ある日フレデリークが自宅でパーティーを開くと、色男ポールがホワイに目をつけ、彼女を連れ出して自宅に連れて帰る。後日、ホワイがポールに思いを寄せていることを知ったフレデリークは、ポール宅を訪れ、誘惑してベッドを共にし、何とそのまま2人で数日間パリに出かけて行ってしまう。帰って来る頃には、まさかの恋仲になってしまっていた。二人の熱愛ぶりをそばで静かに見つめるホワイ。フレデリークに支配されて何でも言うことを聞くホワイだが…。という、大変奇妙な三角関係の話で、表面上の表情や動きでは人物の真意が読みにくい、ものすごくモヤモヤした演出がなされており、かなり人物の心情を忖度しながら見てないといけない、故に気づけば映画世界に引き込まれてしまってる。特に、フレデリークとホワイの関係を最大限にボカしてるのが大いなるポイント。さすがシャブロル。意地が悪い。ただ、本作ではこの後の不貞の女や肉屋ほどの微妙さや切れ味がまだ備わっていないため、中盤はもう少しだけ刺激がほしいかなぁという感じ。しかし、後半、特に最後20分はそれまでのゆったりした伏線がシャープに効いて、最終的には革命的ひっくり返しが起こって見ごたえ抜群! 3人自宅で楽しくお酒を飲んだ後のフレデリークとホワイのやりとりの心理的描写の絶妙さには舌鼓をうち、ドア越しに愛の聞き耳シーンは音楽と映像だけの濃厚なすばらしいシーンです。シャブロルらしい唐突かつ鮮烈な終わり方もとても好き。フレデリークを演じるステファーヌオードランの冷たく傲岸だがどこか可笑しみのある雰囲気は役柄にパーフェクトにマッチしてて目が離せないし、ホワイを演じるジャクリーヌササールの謎めきと健気さと狂気は、うーん、可愛いような、不気味なような。てか、ゲイカップルのあの訳の分からんテンションの高さとバカっぽさは一体何なんでしょうか。なぞに作品の中で目立ってる。ポールより目立ってる。ちなみにポールを演じるジャンルイトランティニャンはすごく無味って感じ。見た目の印象がとても無味。変わった俳優だ。シャブロルのファンとしては、絶頂期の他の作品を何とかソフト化してほしいところですが、どうでしょうか。特に、破局と野獣死すべしは何卒…!
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