女鹿の作品情報・感想・評価

「女鹿」に投稿された感想・評価

netfilms

netfilmsの感想・評価

4.0
 弦楽器の不協和音にミシェル・ブーケに捧ぐの文字、フランスのパリの街並み、セーヌ川にかかる橋の上で絵を描くホワイ(ジャクリーヌ・ササール )には小さな人だかりが出来ている。彼女が一心不乱に描くのは猛々しい牡鹿の絵。南仏から来ていた貴婦人フレデリーク(ステファーヌ・オードラン)はその姿を見て、一瞬で恋に落ちる。橋の上の石畳に無造作に投げ込まれる500フランもの大金。貧乏なホワイはその大金に目が眩みながら、戸惑いの表情を浮かべている。長い脚にピンヒール、黒のミンクのドレスに身を包むフレデリークのゴージャスな姿。そんな彼女とは対照的に深緑のタートルネックに、GジャンとGパン姿の質素でいかにも貧乏なホワイの出で立ち。フレデリークは美術が好きなホワイの機嫌を取ろうと、蚤の市で幾つかの絵をピックアップする。だがオリジナルかコピーかの区別も付かないフレデリークは恥をかいてしまう。南仏サン=トロペからこの地にやって来た富豪のフレデリークは、パリにもう一つの部屋を持つが、そこにホワイを案内する。人も羨むようなブルジョワジーの優雅な暮らしにホワイの心はときめく。翌朝、2人はサン=トロペにあるフレデリークの豪邸を訪れる。

今作はシャブロルの出世作で、ヌーヴェルヴァーグ不朽の名作として知られる『いとこ同志』とは同工異曲の様相を呈す。田舎町で温和な母親に育てられた23歳の貧乏学生シャルルと、都会で友人を住まわせながら、パリのアパルトマンで優雅な生活を送る従兄のポールの対照的な構図は、ホワイとフレデリークの関係性に置き換えることが出来る。サン=トロペにあるフレデリークの豪邸、女中のおばさんとリエとロベーグという醜悪な2人の男を金で囲う囲う暮らし、ケニアやモザンビークから取り寄せた動物たちの角の剥製、毒付きナイフ、いかにも趣味の悪いインテリアで彩られた歪な空間では、夜な夜なリエとロベーグによる音楽とは呼べないレベルの不快な演奏が始まる。フレデリークはパリで貧しい暮らしをして来たホワイに有り得ないような優雅な生活をさせる。年代物のワイン、家政婦に作らせたご馳走、クラシックのレコード、着なくなったネグリジェを彼女に羽織らす。こうして自分と同じものをホワイに与える様子は、同性愛の関係を暗喩している。だが平穏な蜜月関係はある男性の出現をきっかけに歯車が狂い始める。ある日のフレデリークが催したパーティの席、ポーカーに興じる建築家のポール・トマ(ジャン・ルイ・トランティニャン)は林檎を囓るホワイの姿に目が釘付けになる。この場面は『いとこ同志』において、ポーカーに興じるシャルルがフロランスに一目惚れする描写に呼応する。

その証拠にシャブロルは、午後3時という彼らの待ち合わせ時間にまで符合を加える。導入部分で一心不乱に描いた牡鹿の絵にも明らかだったように、貧しいホワイは力強い牡鹿(男性器のメタファー)を求めている。ポール・トマと出会った夜、荒涼とした白樺の木の生い茂る森の中でトマに唇を奪われた生娘は、その夜、女としての通過儀礼を済ませる。だが天にも昇るようなホワイの幸せの絶頂が、嫉妬深いフレデリークには我慢ならない。翌日、トマを罠にはめて誘惑し、恋人としての契りを結ぶステファーヌ・オードランの悪女ぶりが容赦ない。『いとこ同志』ではシャルルの恋は一度も成就しないまま終わりを告げたが、今作ではホワイの処女を奪った男が翌日にはフレデリークの恋人として彼女の前に立つ。ホワイの衝撃たるや計り知れない。フレデリークとホワイ、彼女たちの間に立つトマの三角関係が歪んだトライアングルを見せるクライマックスの描写が醜悪で容赦ない。深夜の馬鹿話、レコードは音飛びし、フレデリークとトマのアイコンタクトにホワイの心はズタズタに切り裂かれる。夜風を浴びるために外に出た3人、ふとトマの口から出た「愛する女鹿たちよ」の言葉がホワイの心を一層締め付ける。ヌーヴェルヴァーグ的作風をもっとも早い段階で逸脱したシャブロルは、盟友ゴダール、トリュフォー、リヴェット、ロメールらが映画にこだわり続けるのとは対照的に、早くからTVの2時間サスペンスに活路を得る。今作でフレデリークを演じたステファーヌ・オードランはシャブロルの2人目の妻であり、恋人役を演じたジャン・ルイ・トランティニャンはオードランの元夫である。トランティニャンもよく出演に応じたと思うが 笑、現実とフィクションがごちゃ混ぜになったある種の冷徹さと倒錯性こそがシャブロル作品の根底には息づく。
spacegomi

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4.3
シャブロル③

陽光の下で一人佇むホワイのショットが神がかってる。みんな顔が不貞腐れてて最高。
mari

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4.3

このレビューはネタバレを含みます

カッコいい
幸せで終わって欲しかったけどなあ、そういう展開か って感じだった
ロージーの『できごと』に出てたジャクリーヌ・ササールが艶かしい。それはいいんだが、ステファーヌ・オードランがちょいちょい浅丘ルリ子に見えてしまって気分を削がれる。
いや雰囲気はいいんだけどね。オードランがササールのジーンズの前ボタンを外すとことかドキドキするし。
後半はシャブロルだなと思うけど、全体的にはフランソワ・オゾンの映画を見たかんじ。むー
大した話でも無いんだからもっとシンプルに撮ってくれ。
ただ、女が風呂で脚を見せつけてくるシーンはエロい。
とにかくエロい。
しおね

しおねの感想・評価

3.1
女1と女2、女1と男、女2と男の組み合わせで関係を持ったことのある綺麗な?三角関係。

全体的に抑えた感情表現。その中に垣間見える激しい感情が見どころ。

金持ちな女に誘われて屋敷に住むことになった貧乏な女。そのまま性的な関係を結ぶ。が、しばらく住むうちに男に誘惑され、処女を捨てる。貧乏な女は本気の恋ではなかったし、男も本気ではなかったが、金持ちな女の方がその男に惚れちゃった!二人はアツアツアベックになりそのままパリへ!帰ってくるとその男も一緒に住むことになり、元カノと今カノと彼氏(元カノと今カノは元カップル)というややこしい暮らしが始まる。

という何ともスイーツ(笑)なあらすじに見えなくもないが、実際見るとかなりヒリヒリとした雰囲気が漂っていて良い。

階級への問題提起という見方もあって全編面白く見られる。
R

Rの感想・評価

4.3
ビアンのフレデリックに誘惑されて、性的関係を結ぶ女ホワイ。ふたりに割って入る男ポール、ポールに魅かれるホワイ。さらにその中に割って入り、ポールを横取りするフレデリック。三角関係が織りなす心理劇。愛と嫉妬。支配と被支配。鬩ぎ合う関係。だれが、どちらに、どんな気持ちをなぜ抱いているのか読みとろうとしても読み切れない心理から展開するストーリーの意外性。定義しないからこそ生まれる微妙な駆け引きとサスペンス。ふたりの女優から放たれる圧倒的な魅力!ステファーヌオードランのクールさ、ジャクリーヌ・ササールの蠟人形のような無表情。よいですわー!