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ゴースト/血のシャワーのhorahukiのレビュー・感想・評価

ゴースト/血のシャワー(1980年製作の映画)
3.3
彼らが乗り込んだのは幽霊船だった…。

沈没した豪華客船から何とか逃げ出し筏で漂流しつつ助けを探す約10名の乗客&船員。そんな彼らの前に現れたのは真っ黒で巨大な船。なぜか海のど真ん中で錨を出し停船してるその船に呼びかけるも全く応答なし。突然無言で降ろされたタラップを登る主人公たちだったが…。

幽霊船を舞台とした海洋ホラー。
『ゴーストシップ』のオリジナルだと書いてある記事を良く目にしますが、幽霊船だということ以外に特に共通点もなく、影響は与えているのでしょうが、オリジナルとリメイクの関係にないのではないかと思います。幽霊船の意味も全然違うし。まぁ、ジャケはソックリなんですけどね(笑)

本作は乗り込んだ船が生きていた系のお話。
自分でタラップを出しときながら、人が登ってる最中にタラップごと突き落とすという悪戯っ子ぶりを発揮するデスシップさん。別のシーンでは、ロープをオッサンの足に引っ掛けてすぐに海に放り投げるのかと思いきや、ブランブランと遊びまくり「落とすの?落とさないの?」という新喜劇みたいな遊びをひとりで始めたり、オバさんに飴ちゃん美味いよアピールしときながら、オバさんが食べたら「ごめん!それ毒入りだった!」というドジっ子な一面も。

そんな可愛いデスシップさんなんですが、もちろん怖さもアピールしてきます。中でも登場シーンが良い感じ。海を漂っていると突然背後に現れる聳え立つ城壁のような巨大な船。その暴力的とも言える物量と無機質さによる威圧感が途轍もなく、突然言葉もなく降ろされるタラップや窓から主人公たちを見下ろす何者かの視線を表現するかのようなカメラが船の中に潜む「誰か」の存在を匂わせつつも、鈍くて重く響くようなBGMと合わさり、この世のものではないかのような異質な空気感を漂わせる。

編集ミスか?と思ってしまうほど不自然に挿入される脈絡のないシーンたちがフラッシュフォワードだったと判明することにより、彼らの運命という未来が逃れることのできない残酷なものへと収束していくことが暗示されるのは絶望感あって良い感じ。

副題になってる血のシャワーは残念ながらちょっとだけなのですが、この船の秘密が露わになるシーンのオカルト的な薄気味悪さと惨たらしさはかなりのもの。そんな感じで雰囲気良くて結構好きなのですが、これも正直面白いかと言われると微妙かもです…。でも『ゴーストシップ』よりかは好きかな〜。
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