あなぐらむ

女囚さそり 701号怨み節のあなぐらむのレビュー・感想・評価

女囚さそり 701号怨み節(1973年製作の映画)
3.8
伊藤俊也監督により一旦終了を見た「さそり」に、梶芽衣子が「野良猫ロック」の盟友・長谷部安春監督の登板を受け再度挑戦した作品。
伊藤のどこか土着的な「怨嗟」「反体制」とは違う都会的でクール(というよりハードボイルド)な活劇に仕上がった。細川俊之、田村正和という従来の東映とはちょっと変えた起用が効果を上げている。渡辺やよいの続投は嬉しいところ。

神波史男と松田寛夫のホンではあるが、この物語は基本、田村正和演じる学生運動崩れの男と、細川俊之演じる公安から転じた捜一の刑事の対決でもあり、ここには「天皇制」的な反体制よりは「学生運動」という、より当時の観客に身近な題材、「反権力」が置かれている。ここでのナミは、どちらかというと「野良猫ロック」で梶が演じたキャラクターに転化されている。
看守側を男性で固めて、虐げられる女囚に性差や弾圧を重ねた伊藤の発想はここにない。

とはいえ長谷部の演出は「けもの部屋」を踏襲、ロケを多様し、切り取るフレーミングが見事。セットの使い方も巧い。
助監督にこの後、梶芽衣子から主役変更していく「さそり」を監督する小平裕。

この直前に「修羅雪姫」があり、梶さんは藤田敏八、本作の長谷部安春といった旧日活の監督と仕事を共にしているのが、なんとなく日活っぽくて面白い。